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医師2000字のメール「入院調整」の現実

2021年8月31日 21:01
医師2000字のメール「入院調整」の現実

news zeroに届いたおよそ2000文字におよぶメール。東京都の入院調整本部にいる民間の医師からのものです。そこには、逼迫する医療の現状と私たちへのメッセージがつづられていました。

この医師には毎朝、都内の病院からコロナ患者を受け入れられる病床数が報告されます。そして、入院を待つ患者の中から「誰を、どこの病院に入院させるか」毎日調整を行っています。つまり、救う人・救えないかもしれない人の選択=トリアージを毎日迫られているのです。
そんな医師が“いま知ってほしいこと”としてつづったメッセージをご紹介します。
(以下、全文から抜粋)
 
○医師からのメール~「最前線」の現状~
「東京都の調整本部での我々のトリアージは知られていません。私はこのトリアージをまず知ってほしいと思います。
調整本部に上がる調整は1000件ほど。病院が受け入れ可能な病床を毎朝あげます。これを見て我々は患者さんの入院調整をしています。
先週、重症が50名上がっていました。救急車内、転院搬送、在宅医療が介入、何もされていない人。ICUは1床…誰をここに入院させるか、それを決めなくてはなりません。まして、その人は自分の目の前にいません。我々はバイタルばかりじゃなく、患者さんの顔をみて状態を把握します。そんな中で誰をその1床に入れなくてはならないかを決める必要があります。その後は100件の病院にダメ元で電話をする。最後に保健所に状態が悪くなったら直ぐに救急車を呼ぶように伝えて、帰宅する・・・。
救急車を呼んでも病院に入れない。この選別=トリアージをどんな思いでしなければいけないか。誰が勝手に優先順位をつけられるんだ。それも人の命の。
まずは、『もうこんなトリアージをする必要があるんだ』と言うことを一般の人に広める必要があります。患者と接する時は、『私はこの人の身内』と思い対応するようにしています。入れ込みすぎず。自分の身内に優先順位をつけられたら、それで生命の危機にたたされたら、基準もなく。たまったものではありませんよね。
でも、いまのCOVIDは災害で、明らかに天秤はCOVID陽性者に傾き、医療資源が枯渇しそうな感じです。皆、最近『COVIDは災害だ』と言い出していますが、医療者は“災害モード”に切り替わっていません。平時は1人に全力を尽くし救える命を救おうとしています。災害時は1人にすべての資機材をつぎ込んでいたら、残りの人は何の恩恵も受けられなくなります。今までは“ECMO導入、助かる確率が1%でもあるなら全力で”ですが、この状態では助かる見込みがない少ない人には治療の断念を考えねばなりません。
家族が希望すればなんであろうが集中治療(人工呼吸管理、人工透析)を行うのが日本です。今は本人や家族が望んでも治療の見込みが薄い人は治療を断念する。病院も『自分の所は重症見られないから』。
4波まではそれで良かったかもしれないけど、自分たちで出来ることを1個でも増やせば、1床病床増やせば、120床増える。1床人工呼吸器をつければ、120の重症者がみられる。そして最大限の治療を行い、最大多数を救う事を行う必要があると思います。このことは医療者がちゃんと認識しなければいけないことと思います」
 
トリアージは普通、災害などの時に治療の優先度を決めるために行われること。医師は、「ひとりひとりが災害モードになりきれてないんじゃないか」と指摘します。メールには、私たちへのメッセージも書かれていました。
 
○医師からのメール~私たちへのメッセージ~
「『しんどい、大変だ』と言うことを言いたいわけではありません。どこも皆、同じように大変です。
インドや欧米のようなことにならないかと危機感をもってほしい。そこにいたらないようにするにはどうすべきか。
『パラリンピックするのになんで自粛しなければいけないの?』『もう慣れたー、あの人やってるから自分も』じゃないよ。
今COVIDになったら死を覚悟しなくちゃ。病院に行けたらラッキー。酸素があるだけ幸せです。これを知ってほしい。」
 
落合陽一さんは
「トリアージって災害や戦争、大規模事故の時のものというイメージが強いけど今もう医療現場はそういう状態ですよね。
一方で、病院の外やテレビの前では日常を過ごしている方もいることに違和感がある。それでさらに患者が増えるわけで、いたたまれない気持ちになる」とコメント。
 
有働キャスターは
「このメールを読んで、本当に医療現場は大変なんだなと。いま、この瞬間も選別が行われているかもしれないと。それが自分の親かもしれない、という思いになりました。“致し方がない”という名目のもとトリアージが行われる現状に、先生が泣いている感じがしました」という思いを語りました。