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絶滅に備え保存…“種子の金庫”日本初取材

2021年6月12日 18:25

「植物の絶滅」に備え、種子を保存する世界でも数少ない施設が韓国にあります。厳重に警備されている施設に日本メディアとして初めて入りました。

韓国・東部の奉化、山々に囲まれた場所に、その施設はあります。国の保安施設に指定されていて、撮影場所の制限を条件に、特別に取材が許可されました。種子の金庫・シードボルトは、気候変動や戦争などによる植物の絶滅に備えた種子の保存施設です。

地下に広がっていたのは巨大な空間。コンクリートの壁の厚さは60センチもあり、大規模な地震にも耐えられるように設計されています。

そこには国の内外から預かった多様な植物の種子が…。野生では見られない貴重なものを含む約4700種類、9万5000個の種子が保存されています。長期間保存するため、保管庫の温度はマイナス20℃で管理されています。

施設の責任者が非常に珍しい種子を見せてくれました。長い年月を経て現代によみがえった種子です。

李尚容施設長「遺跡を発掘すると、植物の種子が出てきた」

2009年、城跡の発掘の際に見つかった種子。栽培に成功すると、約700年前のハスの種子であることがわかりました。咲いた花から取り出された種子がシードボルトに保存されています。

シードボルト設立のきっかけは2010年、名古屋で開かれた生物の多様性を守る国連の会議「COP10」。生態系保護という目標に向け、韓国政府が2015年に設立し、種子の保存を無償で受け付けています。植物が絶滅したとき、種子を取り出し復元することが大きな目的です。

研究員「種子を元気で安全に長期間保存するために研究を進めている」

今、研究を進めているのが、チョウセンシラベという針葉樹です。モミの木の一種で、クリスマスツリーとして人気があります。韓国の済州島などに自生していますが、地球温暖化などの影響で数が減少し、現在、絶滅危惧種に指定されています。

植物の特徴を研究し、種子だけでなく、情報とともに保存することがシードボルトの特徴です。

国連の提唱するSDGs(持続可能な開発目標)では、植物を含めた生物の多様性の保全を掲げていて、保存する種子も増え続けています。

李尚容施設長「シードボルトは未来世代のための施設だ」「私たちは“万が一”に備えていて、この“万が一”が現実にならないことを望んでいる」

保存されている種子を取り出す必要がない…それが、シードボルトが目指す理想の未来です。