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首相 ワクチン“目標100万回”実現は…

2021年5月11日 9:25
首相 ワクチン“目標100万回”実現は…

菅首相が目標に掲げた「1日100万回」の新型コロナウイルスのワクチン接種。首相に面会した研究者の試算では、実現すれば年末に東京の感染者はほぼゼロになる半面、51万回なら五輪を直撃。経済損失も約2倍になります。身内からも疑問の声が上がる中、目標達成の可能性は…。

■「100万回」と「51万回」で感染者数は

有働由美子キャスター
「高齢者への新型コロナのワクチン接種が本格化して、菅首相は『1日100万回の接種を目指す』『7月末までに高齢者への接種を終わらせる』と掲げています。首相官邸のホームページの情報から接種の状況を算出すると、医療従事者は42.7%(7日時点)、高齢者は0.5%(9日時点)になっています」

小野高弘・日本テレビ解説委員
「東京大学の藤井大輔特任講師と仲田泰祐准教授が、菅首相に8日面会した際に見せたグラフがあります。東京の場合、接種のスピードによって感染者数がどうなっていくかを示したものです」

「週に650万回、つまり1日100万回近くを打つ場合を見てみましょう。5月31日に緊急事態宣言が解除されると感染者は増えていき、7月末に高齢者への2回接種が終わっても少し増えます。ターニングポイントは9月頭で、社会全体にワクチンの効果が現れ始め、感染者は減っていきます。そして12月末に高齢者以外の人も2回接種を終えて、そのころには限りなくゼロに近づいています」

有働キャスター
「ただ、これは目標通りにいけば…ですよね」

小野解説委員
「そういうことです。では週に360万回、つまり1日51万回ならどうか、同様にグラフで見るとどうでしょうか」

有働
「感染者が急増していますね」

小野
「接種のスピードが落ちる分、感染者が増えていきます。7月の下旬に1500人を超えて、また緊急事態宣言を出さないといけない状況になってしまいます」

有働
「まさに東京オリンピックが開催されている時ですよね」

小野
「ちょっと心配ですよね。緊急事態宣言で感染者数は一旦、減りますが、高齢者が2回の接種を終えるのは9月末になります。社会全体でのワクチンの効果が現れるのはまだ先になりますから、感染者も500人ぐらいで推移していきます。この先の1年間の経済損失も変わってきます。100万回なら1兆8000億円、51万回なら3兆5000億円と見込んでいます。緊急事態宣言が響いてきます」

■政府関係者「あくまで目標」

有働
「早く打てば緊急事態宣言も避けられるし、年内には感染者をなんとか抑えられるということになります。ただ『1日100万回』は可能なのでしょうか?」

小野
「菅首相は『1日100万回』と述べましたが、政府関係者はこう言います、『100万回は、あくまで目標。効率的に接種をしているインフルエンザですら60万回が限界なのに、100万回なんて無理』。また政府が行った緊急調査では、人口の多い東京都では区市町村の3分の1は、『7月末の高齢者への接種完了は確約できない』という回答でした」

■医師・看護師どう確保…課題山積

小野
「課題が多くあります。全国に現在1万か所以上ある接種会場を4万5000か所に増やす予定ですが、『会場を増やす分の医師や看護師を確保できていない』という自治体が約2割あります。厚生労働省は、資格を持ちながら仕事に就いていない『潜在看護師』も活用したい、歯科医も研修して担い手になってもらいたい、と考えています」

「もう1つ課題なのは、予約システムです。予約が殺到してシステムに不具合が生じたり、電話がつながらなかったりといった状況も解消しないといけません」

有働
「1日100万回接種も、高齢者を7月までに終わらせるのも、ぜひ実現してほしいと期待してしまいますが、その期待を裏切らないよう、現場の実情を見据えてどうやって実現するのか、道筋も示していただきたいと思います」

(5月10日『news zero』より)