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貿易の国際協調を取り戻せ~RCEPと日本

2020年12月5日 9:52

RCEP(=東アジアの地域的包括的経済連携)協定は、8年の交渉の末に11月に合意に至った。この協定は日本や、私たちの生活にどういう意味を持つのだろうか?

■RCEPは日本の貿易額の半分をカバー

RCEPの協定は、中国や韓国、ASEANの国々など15か国が結んだもので、世界のGDPや貿易額の3割、日本の貿易額の半分をカバーする広い地域の経済協定だ。日本にとって、特に最大の貿易相手国である中国や第3位の韓国と、初めて自由貿易協定を結んだことにも大きな意味がある。

■部品もお酒も輸出しやすくなる

中国に輸出する工業品のうち関税撤廃率は今の8%から86%に跳ね上がり、日本から自動車部品や農業用トラクターなどが輸出しやすくなる。また、将来は日本酒や中国向けのチョコレート菓子、インドネシア向けの和牛なども安く輸出できるようになる。日本が守りたいコメなど5品目の輸入関税は維持されたことから、日本の農家からも大きな反発はなく、政府関係者は「WinWinの貿易協定」と話す。

関税の撤廃率でTPP(=環太平洋経済連携)協定やヨーロッパとの経済連携協定より劣るものの、各国の合意を優先したものだ。

■協定の内側から中国をけん制

協定合意までの過程では交渉が中国主導ではないか、中国の影響力が増すのではないかという声が一部から出た。しかし、この協定で世界で初めてできた共通ルールもある。

中国は海外から進出した企業にいろいろな要求を出す懸念があるが、RCEPでは、進出してきた企業に対して政府が技術移転を強要することを禁止するルールなどができ、これを中国も受け入れた。中国を世界貿易のルールに組み込んでいく上で大きな一歩だ。日本は今後も協定の内側から中国をけん制する姿勢だ。

■自由貿易の危機をのりこえろ

一方、参加にむかっていたインドは去年、交渉からはずれたが、連携を呼びかけてきた日本はじめ各国は、インドがいつでも交渉に戻れる形で構えている。アメリカのTPP脱退や米中対立など世界の自由貿易が危機にある中で、日本はRCEPの枠組みを生かし国際協調と世界貿易活性化への貢献が期待されている。