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タイ反政府デモ激化“不可侵”王室も矛先に

2020年9月26日 18:25

東南アジアのタイでいま、学生らによる反政府デモが激しさを増しています。当初、政権退陣を求めていたデモがこれまでタブーとされてきた王室へと矛先を広げる背景を取材しました。

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24日、祖父の命日の式典に出席したタイのワチラロンコン国王。タイでは「神聖不可侵」の存在。侮辱すれば最長で禁錮15年の不敬罪に問われます。そばに控える兵士は膝立ちです。王室について議論することすらタブーとされてきましたが…

パリットさん「いまこの国の君主制は過剰な権力を持っている」

こう話すのは大学生のパリットさん(22)。反政府デモの学生リーダーの1人です。パリットさんはデモを「扇動」したとして警察に逮捕されたこともあります。

パリットさん「民主主義バンザイ!」

突き出された3本の指。「独裁からの自由」を示すポーズです。各地で活発化するデモの象徴となっています。

学生らの要求は当初、軍事政権の流れを組む現政権の退陣や、非民主的な憲法の改正などでした。それが先月に入ると…

デモ参加者「(話すと)逮捕されるかな。君主制は、もはやタイという国に何の利益ももたらさないと思う」

訴えの中心が王室改革に移り始めたのです。長期間タイを不在にしたり、王室財産を管理する機関を直轄にする権限の強化などが、国民に寄り添った姿勢でないと反発を呼んでいます。

この日、仲間とともにデモの準備をしていたパリットさん。真の民主化のためには不敬罪の廃止や王室の権限縮小が欠かせないと話します。

パリットさん「私たちは自由と民主主義がどういうものかを学び始めた。そして過去5、6年の間に抑圧されていたことに気づいた」

パリットさんらの考えは、特に若者から支持を得ています。一方、タイには高齢者を中心に王室を慕う人も大勢います。


王党派グループリーダー「タイが長年、政治的な問題を抱えていることは否定しない。ただ君主制はこれに関係しているか?何も関係していない」

世代によっても分かれる意見。しかし、先週開かれたデモが現政権の発足後、最大規模となるなど動きは広がりを見せています。

パリットさん「大勢がここに集まった。これは独裁者とその背後にいる者への警告のサインだ。彼らは全てを失う前に自らの姿勢を見直さなければならない」

当局はこうした流れを警戒し、取り締まりを強化していて、タブーに踏み込んだ動きは緊張感を増しています。