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コアラも瀕死 オーストラリア森林火災

2020年3月6日 18:00
コアラも瀕死 オーストラリア森林火災

去年9月から続く、オーストラリアの森林火災。コアラも危機的な状況に陥っています。

ピーターさん「赤くなっている部分が見えるだろ?これはやけどの跡だよ」

ピーターさんはボランティアで、コアラたちを保護しています。コアラたちは大きな火災にショックを受け、物音におびえるなど、不安定な状態が続いているといいます。

ピーターさん「オーストラリア人にとってコアラは特別なんだ」

ピーターさんはコアラの主食、ユーカリをやけどをしたコアラに代わって、毎日集めています。

ピーターさん「コアラはユーカリから水分を摂取するので新鮮な葉っぱが必要なんだ」

“野生動物の楽園”と呼ばれるカンガルー島では―

森鮎子記者「このあたりはコアラの生息地として知られていましたが全て焼き尽くされ、森は見渡す限り真っ黒になってしまっています」

軍の支援で作られた仮設の病院では、オーストラリア各地から獣医たちが集まり、これまでに300匹以上を治療してきました。

獣医師「爪が焼け落ちてしまって、もう木に登ることができません。野生で生き延びるのは難しい状態です」

木から下りる時に、焼けた幹で足にひどいやけどを負っていました。回復の見込みがない場合などは、最終的に安楽死を選択するケースも。すみかであるユーカリの森も焼けてしまい回復しても行き場がない状態が続いています。火災の被害から復興するめどは立っておらず、固有のコアラなどの生態系を守るための努力が続けられています。


――取材した森鮎子記者と中継がつながっています。森さん、現地を取材してみていかがでしたか?

映像で見ている以上に燃えてしまった範囲があまりにも広大で衝撃を受けました。今回の火災は観測史上最も平均気温が高かったことが燃え広がった要因といわれていますが、実際、現場を歩くと本当に暑くて乾燥していて、さらに強い風が吹いていましたので、ひとたびどこかで火が起きば、あっという間に燃え広がってしまうような危険な火災だったということを実感しました。

オーストラリアは毎年のように森林火災が起きる国なので、全土でボランティアの消防士が多く活躍しています。私たちはあるボランティア消防士に話を聞いたのですが今回に限ってはあまりにもその規模が大きかったために、自分たちではもうどうすることもできなかったと肩を落として話していました。


――コアラなど多くの野生動物たちに影響があると聞いていますが、どれほど深刻だったんでしょうか。

10億匹以上にのぼる野生動物が死んだといわれているんですが、コアラやカンガルーなどとは違って非常に小さな生き物ですと、どれだけの数が死んでしまったのか、その被害を知ることも難しい状況です。専門家の中には、一部の野生動物は絶滅した種もいるのではないかと話していますので、これまでと全く同じ生態系を取り戻すというのは不可能に近いといえます。

映像の中でカンガルー島のコアラというのを紹介しましたけれども、オーストラリア本島のコアラは「クラミジア」や「免疫不全」を起こすようなウイルスに感染しているのがほとんどなんです。ただこのカンガルー島のコアラに関しては、そういうウイルスに感染していない、非常に貴重な個体でした。今回、その貴重なコアラが半数近く数を減らしたうえに、食料のユーカリが燃えてしまったので生き延びたコアラでさえも食糧不足で餓死している状況が続いています。

発生してから半年近くがたって、火災そのものはほぼ収束したんですが野生動物の危機的な状況というのは続いています。


――今後、生態系を取り戻すための課題は何になりますか。

今後はユーカリの木などの大規模な植林というのが必要になってきます。ただ今回の火災、オーストラリアの観光シーズンのピークである年末に集中したこと、そしてその後の、新型コロナウイルスの拡大によってオーストラリアの観光業、経済には非常に大きな打撃となっています。まずは、被災した人たちの生活再建というのが最優先ですので、生態系の回復という意味では様々な形での寄付や各国の支援が必要になってくると感じています。

【the SOCIAL viewより】