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がん教育を行う上で重要なのは「目線」

2020年2月4日 15:38
がん教育を行う上で重要なのは「目線」

世の中で議論を呼んでいる話題について、ゲストに意見をうかがう「opinions」。今回のテーマは「学校でのがん教育」。NPO法人「がんノート」代表理事の岸田徹氏に話を聞いた。

新学習指導要領では、中学校では2021年度、高校では2022年度から「がん教育」を実施されます。授業では、がんの種類や、がん検診などでの早期発見、治療法などについて学ぶことになっています。そのため国では、医師やがん経験者を外部講師として活用する態勢を整備し、がん教育の充実に努めるとしています。

学校で「がん教育」を行う上で重要なこととは?岸田さんのご意見をうかがいます。


――まずはフリップをお願いします。

「目線」と書きました。

先ほどは中学校・高校と紹介がありましたが、今年からは小学校での「がん教育」が始まっていきます。いろいろな方が「がん教育」をしていく中で学校側の目線、そして医療者が行ったときの目線、がん経験者が行ったときの目線はそれぞれ違うと思うのですが、何よりも子供が学ぶということで、小学生や中学生といった子供たちの目線に立って伝えることが大事じゃないかと思います。そうしないとやっぱり、どこかで他人ごとに思ってしまって、がんの理解が進んでいかない。

――岸田さんも子供たちに教える経験というのはありますでしょうか。

今、多くの機会をいただいていますが、そのときにも子供たちにわかりやすい言葉を使うことや、どうすれば興味を持ってもらえるだろうといったことに配慮しています。そして、一番重視しているのは、子供たちに「帰ってからお父さんお母さんとお話をしてみてね」と伝えることです。そこで例えば、子供たちが「お父さんお母さん、たばこってあまりよくないんだよ」って言ってくれたら、お父さんお母さんも普通に言うと聞かないけれど、子供たちから言われると、どうしようと思ってくれる。

――子供たちのことを考えると、気をつけなきゃと思いますよね。

はい。子供と大人の教育はつながっているのではないかなと、個人的には思いますね。

――一方で、がんというのは気をつけていてもなってしまう病気、というふうにもいわれますよね。

そうです。今、2人に1人はがんになると言われていて、年間100万人が新たにがんになる。やっぱりがんは遠いものではなくて、身近なものであるという認識もしっかりとこの教育の中で伝えることが大事なのではないかと思っています。

――指導者側の立場としては、どういうところに気をつけていくべきだと思いますか。

そこに関しては、自分の個人の経験談も必要ですが、自分の思いだけを伝えるのではなく、この「目線」という言葉もありますように、しっかりとした客観的・科学的な根拠が入った情報を伝えることも大事だと思います。

――そして岸田さんのような経験者の方が外部講師として行くこともあると。

やっぱり、すごく増えていきますね。

――外部講師として迎えられた場合、どういったことを伝えたいと思いますか。

僕は一番闘病中に支えてくれたのは友達でした。だから今、病気になっても周りが支えてくれる。だから周りがもし、がんや、がんでなくても何かピンチになったりしたら、それを支えられるような子供たちになってほしいという思いを発信したいです。

――そして、がん=死というわけではないですよね。

そうなんです。実際に患者さんが外部講師として行くことによって、がんの患者さん=死ぬ人だと思っていたけれども、こうやって生きている人もいることをわかってもらう。これも非常に重要なことだと思います。もちろんお亡くなりになるケースもあるのでそういったところもしっかり説明しながら、ちゃんと生きている姿を見せていくことが大事ではないでしょうか。

■岸田徹氏プロフィル
NPO法人「がんノート」代表理事。25歳と27歳でがんを経験。当時、5年生存率は50%。それでも前向きに治療に取り組んだ。希少がんだったということで、情報も少なく落ち込むなか、先輩がん患者のブログ情報などで希望をみつけたという。患者が発信する情報は、誰かの希望になる。そんな思いで、仕事や家族、お金のことなど、がんを経験した患者の生の声を発信しつづけている。

【the SOCIAL opinionsより】