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子どもの貧困と教育格差 その原因は

2020年1月27日 17:35
子どもの貧困と教育格差 その原因は

世の中で議論を呼んでいる話題について、ゲストに意見をうかがう「opinions」。今回のテーマは「子どもの貧困と教育格差」。NPO法人「Learning for All」代表の李炯植氏に話を聞いた。

まずこの言葉から「Socioeconomic status
(ソシオエコノミック ステイタス)」略してSES。「社会経済的地位」と訳されます。生まれ育った地域や家庭の経済状況、文化状況などその人を取り巻く、社会的、経済的背景をいいます。

今、この「SES」と子どもの教育格差の関係が注目されています。文部科学省は、毎年行っている全国学力・学習状況調査で2020年度、「社会経済的背景」(SES)が子どもの学力に与える影響を本格的に調査する方針を決めました。


――そこで、子どもの貧困と教育格差について、李さんのご意見をうかがいます。まずは、フリップからお願いします。

「7人に1人」「2人に1人」です。

これも子どもの貧困の現状を表す数字なのですけど。最新の調査によると、日本の7人に1人の子どもが貧困、一人親世帯に限ると2人に1人が貧困だといわれています。貧困というのは、ざっくりいうと日本全国の世帯年収の平均の約半分で暮らしている家庭のお子さんがこれだけの数いるということです。


――経済格差というのは原因になってくるのですかね。

その経済格差が教育格差につながるといわれていまして、やはりその低所得世帯のご家庭ほど学力が低くなって、そうするとやっぱり学歴の差につながって、最終的には生涯年収の差になって、貧困が連鎖していくといわれています。

結果的にそれで社会の階層の流動化が進まず、貧困の子ほど貧困になると、そういう分断された社会が固定化されるという問題が今かなり問題になっていますね。


――本当に複雑でちょっと根深い部分もあるんでしょうかね。実際、李さんのところに来るお子さんたちは、生活の中でどういった状況に置かれているのでしょうか?

学力の状況でいくとやっぱり中3で分数ができないとか、やっぱり1年以上学力が遅れているお子さんが、かなり多いです。ただ、塾に行きたくても行けないという経済的な問題もありますし、そうした結果、結局は低学歴になっていって、就職ができないというのもありますし、そもそも学力の問題以前に、子どもの貧困というのは、例えば虐待とか不登校とか発達障害とか、最近など外国にルーツを持つお子さんとか様々な背景が絡み合ってお子さんの学力に影響してきます。

実際我々のところでは、ご飯は食べられないとかお風呂に入ってないとか、そういったケースもありますし、かなり複雑な状況になっていますね。


――そういったお子さんたちに対して、どういった支援活動をなさっているのでしょうか。

私たちは学習支援と居場所支援の2つを軸にやっています。学習支援といいますと、学校の中あるいは学校の外の公民館などで、塾に行きたくても行けない、あるいは勉強したくできないお子さんに対して個別の学習支援を大学生のボランティアが行いますけど、そういった支援をしております。

居場所支援はですね、中高生向けのフリースペースでフリースクールのようなものを開いて、安心安全な居場所の中でお子さんたちが自尊心を回復しながら、お子さんらしく前に進んでいくような支援をしています。あと低学年向きには、学童をやっております。毎日開けてですね、夕食も提供する形で、お子さんたち、ご飯も食べられないとかシャワーに入れないとか、そうした生活のニーズにも対応できるような学童もやっております。


――子ども食堂にも近いような雰囲気もありますか?

そうですね。子ども食堂にも近いですし、学童にプラスして、子ども食堂ですね。


――こうした子どもたちの問題を解決していくために、今後さらにどういったところに取り組んでいかれるか、展開を教えてください。

やはり学習支援や居場所支援といった、今困っているお子さんに対する支援は、引き続き提供し、全国的にも展開していくべきだと思うのですが。やはり、そういったお子さんが生まれる社会の構造自体を変えようと思うと、やっぱり子どもの貧困って親御さんの貧困ですし、その親御さんを取り巻く労働環境、社会保障の問題、やっぱり社会全体で問題解決しないといけないんです。

我々は、今、ボランティア様のべ2000人以上、大学生の方が参加して、いろんなセクターに就職していっています。官僚、教員、民間企業もそうですし、学者さんになる方も政治家もいらっしゃるんですが、そしたら我々のネットワークをしっかりとつないでですね、社会全体で、そういった方々と一緒に10年20年かけて、問題の構造自体を変えていくようなアプローチをとりたいと思っています。


――まさにこのチェンジメーカーになっていってもらうというところもありますか?

そうですね。やはりどれだけの人が主体的に自分事としてこの問題に取り組むかで、社会課題の解決スピードが上がっていくと思うので、そういったところも意識しています。


――目の前の短期的な課題、それから長い目での支援、課題解決という2つの柱になってくるのでしょうか?

その通りですね。


――何か、私たちにもできることがあったら、教えていただきたいのですが。

はい、全国に学習支援の教室も、子ども食堂もかなり広がっています。やはり、日本全国どこでも貧困問題が実はあって、その自分の住んでいる地域の子ども食堂に顔を出してみるとか、あるいは地域のNPOさんに寄付をして活動を応援していただくとか。そういった形での後押しができるかなと思っています。

――社会全体で見守っていくということが大切になってきますかね。

そうですね。

【the SOCIAL opinionsより】