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若者が地元に戻って就職しないワケ

2020年1月21日 15:52
若者が地元に戻って就職しないワケ

世の中で議論を呼んでいる話題について、ゲストに意見をうかがう「opinions」。今回のテーマは「地元に戻って 就職しないワケ」。地方と都市をつなげる事業を手がける、kaettara代表の永井彩華さんに話を聞いた。

マイナビが2020年卒業予定の大学生を対象に行った調査によりますと、卒業した高校の所在地、つまり地元で就職したいと答えた人は全国平均で49.8%と、年々減少しています。さらに、地元を出て進学した人に、地元企業への就職活動で障害に感じていることをたずねたところ、「地元までの交通費」が最も高く、次いで「地元までの距離・時間」、「やりたい仕事がない」、「地元企業の数が少ない」、「地元企業の情報不足」などとなっています。

この話題について永井さんのご意見をうかがいます。


――まずはフリップをお願いします。

「翻訳が必要」と書きました。

私自身も地元の女子校を卒業して大学時代から東京に出たのですが、同級生で地元に帰った人を見てみるとだいたいは自治体職員が教師だとか、あと銀行員になっている人が多いなと思っています。

――やはり就職先が絞られてしまうのですか。

そうですね。中小企業の方がたくさんあるはずなのに、公の仕事やわかりやすい企業が多くなってしまっている実態があると思います。

――永井さんは栃木と都市部をつなげる事業をされていますが、栃木にはどんな企業が多くありますか。

栃木県は製造業が支えている町でもあります。事業者が約4000あります。

――それなのに絞られてしまうジャンルがあるということなのですね。そういった現状に対して、どういったことがこれから必要だと感じられますか。

仕事を探す側も企業側も、お互いのことを理解する必要があると思っています。仕事探している側に関していえば、都市であれば大手サイトで職種や業界を絞り込んでいくと、バーっと一覧が出てくる。しかし地方の就職はそういうわけにはいかなくて、ハローワークに出ているか一握りの大手サイトに出ている企業ということになってしまう。なので、職種とか業種で絞らずに、自分のやりたいことの軸を見つける必要がある、というのが一つあります。

――軸を見つけるためにいろんな企業を訪問されているということですが、具体的にどんなところが「心に響くな」、「若者に響きそうだな」と思いますか。

日本酒を造っている企業さんに取材をさせていただいたときに、やはり日本酒を造る現場は力仕事だとか、麹(こうじ)を混ぜるとかそういうイメージがあるかもしれないのですが、造る人の個性を大事にしていたり、マーケティングを26歳の女性に任せていたりするなど、お酒造りという仕事の中にも幅広い活躍の場があるというのを感じています。

――個性がお酒にいきてくるのですか。

そうです。(企業さんが)キャラクターで採用しているとおっしゃっていました。というのも、温度管理が日本酒の味を決めるのですごく重要なのですが、こまめに温度計を見にいくタイプだとか、そういうロジックがあるみたいです。いろいろなキャラクターの人を採用できるように採用の窓口を広げたいと思っていらっしゃる方もいます。

――そうなると、伝統の味を一本守るというより、さまざまな方が造っているからその人なりの味を楽しんで下さいという新しい領域にいきそうですね。

新しいチャレンジをしたい、もっとよくなりたいという気概のある酒蔵さんだったので本当にそう感じました。

――なのになかなか企業求人情報サイトだと、そういったあたりが出てこない、思いが伝わらない。そこで出てくるのが、「翻訳」ということだと思うのですが。

地元企業を取材していくと、Uターンして帰ってきた人たち、都内でキャリアを積んで帰ってきた人たちとの接点がない、採用した実績がないという現状がある。そういった人たちがどんな環境を地元の職場に求めているのかを、こちらから伝えなければいけないと感じていて、その翻訳の立場に私たちがなれるように今動いています。

――見せ方とかも新しい時代に工夫していくのでしょうか。

そうですね。今、多様な働き方が必要だと叫ばれていると思うのですが、やっぱりまだまだ地域の企業が取り入れるところにまで至っていない。こうなれば、こういう人も採用できますよといったところまで入り込んでいくことが重要だと思っています。

■永井彩華さんプロフィル
kaettara代表。出身地の栃木県と東京との二拠点生活をしながら、栃木を中心とした地方と首都圏をつなげる事業を手がける。きっかけは東京で会社員として働いていたときに「仕事のため地元を出る」という当たり前に違和感を覚えたこと。地元の家族のそばで好きな仕事をしたいと思う人が、実現できる環境をつくりたいと活動を始めた。都内で栃木県出身者を集めたイベント「栃木ゆかりのみ」を主催。栃木県で挑戦している地元企業の情報を発信するWEBメディアも立ち上げた。

【the SOCIAL opinionsより】