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スルメを焼いて…津軽鉄道「ストーブ列車」

2020年1月19日 1:53
スルメを焼いて…津軽鉄道「ストーブ列車」

青森県には、鉄道ファンだけでなく、観光客にも喜ばれる冬限定の列車がある。津軽鉄道のストーブ列車だ。昭和の趣がそのまま残る古い客車で、乗客を温めるのは石炭ストーブだ。

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黒い石炭が赤々と燃えるだるまストーブ。青森県五所川原市と中泊町を結ぶ津軽鉄道の列車内の光景だ。

毎年12月から3月まで運行される「ストーブ列車」の出発駅・津軽五所川原駅は、特別な体験を目当てに訪れた乗客でにぎわう。

終着の津軽中里駅までのお供として欠かせないのがスルメ。だるまストーブの上で焼かれたスルメの味に、乗客たちの笑みがこぼれる。

初めて乗った女の子「すごく暖かくて楽しいです」

東京から訪れた客「スルメがとてもおいしいです。東京には、なかなかこういう感じの列車はないので、うれしいです」

厳冬の津軽平野を走り抜けるストーブ列車は、昭和5年(1930年)に運行が始まった。

客車は、窓際のテーブルの下に栓抜きがあったり、古びた木製のひじ掛けなど、昭和の趣をそのままに残している。

鉄道ファンの男性は、「昔ながらの車両と、ガタガタとする音、これがすごく雰囲気がいいです」と話した。

津軽弁で車窓からの眺めを案内するのは松山千恵子さん。今年3年目を迎える人気の観光アテンダントだ。津軽鉄道に日々乗車しながら沿線の観光案内をする松山さんは、ストーブ列車が暖かいのは、石炭の火の強さだけでなく、乗客同士の交流にあると感じている。

津軽半島観光アテンダント・松山千恵子さん「スルメを1人で食べるのが多いという人は、『いかがですか』と皆さんに声をかけて、おすそ分けして」「ストーブだけではなく、交流があたたかい列車です」

東京から年に10回以上訪れる常連客の男性は、津軽鉄道の乗り心地と訪れるなかで知り合った地元の人たちにほれ込み、もう10年になる。

常連客の男性「飽きないですね。こちらの人たちが優しいので、来て楽しんで、遊んでいます。ずっと津軽鉄道がある限り来続けると思います」

津軽平野にしんしんと雪が降ったこの日。普段は午後5時前に運行を終えるストーブ列車は、日没を過ぎても走り続けた。旅行会社と共同企画した特別な夜行ツアーの運行だ。

ツアー客たちは、4人掛けのボックス席を2人で利用して、地元の食堂が用意した駅弁を味わいながら特別な旅を楽しんだ。

大阪から訪れた客「時間の流れがゆったりというか、せわしなく生きているので、少し心が安らぎます」

津軽鉄道は、昭和の懐かしい雰囲気を満喫できるストーブ列車の旅を、これからも大事にしていく。

津軽鉄道・澤田長二郎社長「ストーブ列車に乗るために来ていただけるのは、我々も感謝の気持ちしかありません。オンリーワンの列車を運行できれば良い」

寒さ厳しいなか津軽平野を走るストーブ列車は、全国から訪れる乗客を温かく迎え入れる。