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動けない日銀 2020年も難しい政策運営

2020年1月3日 20:43

日銀は2019年12月、年内最後となる金融政策決定会合を開き、大規模な金融緩和策の「現状維持」を決めた。米中貿易協議やイギリスのEU離脱問題に一定の道筋がついたことから、海外経済のリスクが後退したと判断。追加の金融緩和は見送る形となった。

2019年7月以降、日銀は海外経済のリスクが高まっていることを背景に、さらなる金融緩和について前向きな姿勢を示していた。しかし、今回、追加緩和を見送った背景にあるのは、「海外経済のリスクが後退した」という理由だけではない。

日本の株式市場もアメリカの市場も今、株価は上昇基調。円相場についても、過度な円高ではなく、比較的安定した状態といえる。このように景気が堅調とみられる場合は、その国の中央銀行の役割としては、過度に物価が上昇する「インフレ」を抑えるために利上げをして資金の需要を減らす政策に舵(かじ)を切るのが一般的。実際に景気が最高潮だったアメリカは、2018年には利上げを行っていた。

しかし、2019年、世界の金融政策は大きく転換する。米中の貿易摩擦が激化したことで、世界経済の先行きに対する懸念は一気に広がり、好調だったIT企業の業績にも陰りがみえてきたため、ついにアメリカの中央銀行にあたるFRB(=連邦準備制度理事会)は、10年半ぶりに利下げに踏み切った。追随する形でECB(=ヨーロッパ中央銀行)も9月にマイナス金利の深掘りに踏み切った。

こうした状況に、日銀も追加緩和を求められる形となった。欧米が利下げなどの金融緩和に踏み切れば、ドルやユーロが売られ、円高に傾く可能性があるとされていて、日銀も金融政策で後れをとっていないという姿勢を海外に示す必要があった。

しかし、日銀が追加緩和に踏み切らなかったのは、「踏み切らなかった」というより「踏み切れなかった」という側面が強い。追加緩和に踏み切れば、将来の日本の財政のバランスに悪影響を及ぼす可能性がある。また、長期金利がさらに下がることで、地方銀行を中心とする金融機関の業績悪化につながるほか、国債などを運用している保険会社や年金基金にも打撃を与え、将来、個人がもらえる企業年金が減るといった可能性も指摘されているからだ。

結局、日銀は1年間、ほとんど動けないまま終わった。国内の株価をみると、2019年の年末の日経平均株価の終値は2万3656円と、年末としては1990年以来29年ぶりの高値となった。しかし、国内の消費は依然として弱く、10月の全国消費者物価指数をみると伸び率は0.4%と、日銀が目標とする2%とはほど遠い状況。

今後、物価が下振れするリスクが再び強まったときに効果的な手段を打つことができるのか? 日銀の「次の一手」は限られている。