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「働き方改革フェーズ2」で、会社員は…

2020年1月1日 3:57
「働き方改革フェーズ2」で、会社員は…

「“サラリーマンは気楽な稼業”じゃなくなる。経団連が提唱する『働き方改革フェーズ2』」

2019年までに大企業を中心に広がった「働き方改革」。「ノー残業デー」がもうけられたり、午後8時になると強制的にオフィスの電気が消え仕事ができなくなったり、と各企業で労働時間短縮のための取り組みが広がった。そして、休暇の取得も推進され、年5日以上の有給休暇取得は法律施行にまで至った。さらに、育児中だったり、家族の介護を抱えていたりする従業員に配慮した諸手当や制度も増えている。

そして、2020年。

経団連が打ち出すのは「働き方改革フェーズ2」だ。経団連の中西宏明会長はこれまでに、新卒の4月一括採用や終身雇用といった日本型の雇用制度に疑問を呈してきた人物。

その中西会長は、年頭会見で「働き方改革の方向性」について次のように述べた。

中西会長「日本経済が競争力を国際的にも発揮できるような、そういう職場環境をどうやってつくっていくか」「キーワードは働き方改革フェーズ2。フェーズ1が、総労働時間の制約などにばかりいってしまったので、“違うよね”と」

つまり分子=仕事の成果、分母=労働時間で考えれば、フェーズ1では、労働時間を減らすことで生産性を高めた。フェーズ2では、分子=仕事の成果を増やすことに目を向ける。仕事の質、量とも引き上げることで、日本の競争力を高めようという考えだ。

そのためには、働き手が能力を最大限発揮できるような職場づくりが重要だと説明する。

鍵となる言葉は「エンゲージメント」だ。エンゲージメントリング(婚約指輪)でなじみのある言葉だが、人事・労務用語では、「会社に対する愛着心や思い入れ」などを指す言葉だ。

日本テレビが入手した、経団連が21日に公表する予定の経営労働政策に関する報告書では、エンゲージメントを「(従業員が)自身の成長と組織の目標の達成の方向を合わせ、社員が働きがいを感じながら意欲的に仕事に打ち込む状態」と定義づけている。

つまり、“仕事は仕事”と割り切ってこなすのではなく、社員が、仕事を通じて喜びと充実感を得られるような職場環境を経営側はつくるべきで、それが社員の能力を引き出し、会社や、ひいては日本経済の強化につながるという考え方だ。

では、エンゲージメントを高める具体策にはどうしたらよいのか?

経団連は、一つの例として、「社員が自分の仕事が社会に役立っている」と実感できるよう、社会的意義を明確にすることを勧めている。また別の例では、「一人ひとりの活躍のフィールドを拡大し、成長を促すような職務経験の機会を与える」としている。具体的には、新規事業の開発などゼロからビジネスを立ち上げる経験などだ。この理由として、「ある程度の努力を必要とする目標を与えられた場合に、社員が成長を最も実感する」という分析結果も紹介している。

エンゲージメントを高めるとは理想的な提案に聞こえるが、一方で、育成・監督する側の労力や責任がかなり大きくなることが想像できる。

こうした提案の一方で、恐らくこれが本命では、と思う提案が「人事・賃金制度の再構築」だ。

中途採用や外国人採用が増える中で、「公正で納得性の高い評価制度」が必要で、企業は「一人ひとりの仕事の成果、業績」に加えて“能力の向上が評価に直結”するよう、評価項目や基準を明示することが重要だとしている。

つまり、勤続年数に応じて昇級するような年功型の賃金体系は見直していくべきで、仕事の能力を高めれば評価が上がり、給与や待遇が上がるようにすることで従業員の能力発揮を促すべきという提案だ。

また、専門的な能力や知識の高い人材を「ジョブ型」と名づけ、給与は、年齢や勤続年数ではなく、人材市場での価値に応じて決める企業も増えているとして、従来とは違う賃金、雇用制度の設定を考えるよう促している。

能力に応じた賃金を支払うことが労働者のやる気を引き出し、能力のさらなる発揮につながる。当たり前といえば当たり前の話だが、かつてのいったん会社に入ったら“サラリーマンは気楽な稼業と来たものだ♪”といった日本型雇用制度は変わっていきそうだ。