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移民急増“国境の町”受け入れ限界に近づく

2019年12月1日 5:18

アメリカの大統領選挙まで1年を切る中、トランプ政権による移民政策が波紋を広げている。メキシコの国境の町では、アメリカから送り返される移民が急増し、現地での受け入れが限界に近づいている。

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アメリカ・カリフォルニア州と接する国境の町、メキシコ・ティフアナ。この日、私たちが向かったのは…。

記者「このあたりは、貧困に苦しむ人たちが暮らす地域だということなんですが、こちらにある教会などで、アメリカを目指す人たちが生活を続けています」

教会の中に並べられたテント。滞在しているのは、アメリカへの移住を希望している移民だ。

ホンジュラス出身の移民「逃げてきた一番の理由は暴力です。ギャングに何を渡しても家族が殺されてしまいます」

移民の多くは、ホンジュラスなど中米の出身者たち。母国の治安悪化などを理由に、アメリカでの安全な暮らしを望んでいる。

しかし─。

ホンジュラス出身の移民「(アメリカの)テキサスからサンディエゴに送られ、その後(メキシコの)ここに送られました。最悪な気持ちです」

アメリカに一度は入国するも、メキシコへと戻される移民が急増。これは、トランプ政権のいわゆる「メキシコ待機政策」によるものだ。

去年、移民集団“キャラバン”が押し寄せたことなどを受け、トランプ政権は、移住の手続きをさらに厳しいものへと変更。それまで、審査中の移民はアメリカ国内で待機することができたが、逃走のおそれがあるとしてメキシコ側に送り返し、審査の順番待ちをさせるようにした。

送り返された移民を無償で受け入れている民間施設のひとつでは、こう話す。

施設の責任者「ここは台所として使っています。冷蔵庫など足りないものはたくさんありますが、皆さんからの寄付でなんとかしています」

使っているのは廃虚となっていたホテルで、お湯が出ないなど設備は十分ではない。これまでに送り返されたのは5万人以上とされ、こうした施設では、物資不足などで受け入れが限界に近づいている。

施設の責任者「トランプ大統領、私たちを支援してください。私たちは、あなたが送り返してきた移民を受け入れているのですよ」

今年7月、7歳の娘とともに送り返されたホンジュラス人の女性。大事に持っていたのは、アメリカ当局から渡された来月の審査の呼び出し状。4か月あまり待ってようやく審査を受けるが、アメリカに入国できる保証はない。

移住の審査を待つホンジュラス出身の女性「もしまた送り返されたら、また待ちます。ここに娘と戻ってくることになります」

多くの子供も送り返されていて、アメリカの移民支援団体などは、非人道的だと強く批判している。

米カリフォルニア州・移民支援団体の幹部「(子供たちは)母国を離れなければならなかったトラウマだけでなく、今の施設の危機的状況を経験し、悪い影響を与えられています。学校に通う機会もなく、捕らわれた状態です」

こうした政策について、トランプ政権は、不法移民の流入阻止につながっていると強調。来年の大統領選に向けて、移民政策は大きな争点になりそうだ。