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言いたい放題?グッズで戦う米大統領選

2019年11月29日 16:07
言いたい放題?グッズで戦う米大統領選

かわいい犬の首輪に“TRUMP”の文字。こちらの犬のバンダナには、“USA”のデザインが…これらはすべて、トランプ大統領の公式グッズ。来年11月の大統領選を前に、トランプ陣営がホームページでの販売に力を入れています。

他にも、クリスマス向けのおもちゃや、トランプ大統領がアニメのヒーローのように描かれたポスターもあります。Tシャツ、マグカップ、タオル、キャップなど、その数、全部で144点。全ての商品の説明書きに、“誇らしい、メイドインUSA”と記載されています。TRUMPと書かれたストローには“リベラルが推す紙製のストローは役に立たない”との表記が。トランプ大統領の政治姿勢が、随所に反映されています。

記者がグッズを購入してみると――

記者「毎日のようにトランプ陣営からメールが届くようになっています」

アンケートへの協力や寄付金を求めるメールが届くようになりました。アメリカメディアによると、購入する際に入力する有権者の個人情報を、選挙戦略に利用しているといいます。

一方、ニューヨークのトランプタワー前で売られているのは、反トランプの“缶バッジ”。トランプ大統領が収監されていたり、バッドマンに殴られていたり、トランプ政権に反対する民主党支持者が、路上販売しています。

民主党を支持する露天商「これはトランプへの抗議です」「彼は非常に危険な男だと思う」

グッズも活用した大統領選。来年の投票日に向け、戦いが過熱しています。


【解説】日本テレビ国際部 小林秀美記者


――1年後に迫ったアメリカ大統領選挙、グッズを通じた戦いも盛り上がっていますね。

はい。今回は映像の中で紹介した「反トランプ」の缶バッジの実物をニューヨークから取り寄せました。


――いろんな種類がありますね。目を引くのはこちらですかね「Lock him up」と書いてあります。

「トランプ大統領を牢屋に入れてしまえ」「収監しろ」という、反トランプのメッセージが強く書かれていますね。


――なかなか強いメッセージが込められていますね。その隣の缶バッジも気になりますが。

こちらはですね、WISEとLIESと書いてありますね。「賢い」は民主党の方なんですね。こちらの左側の人物は「賢い」。トランプ大統領は「嘘つき」と、最終的にトランプ大統領を非難している内容になっています。

こうしたバッジは民主党の支持者が個人的に売っている非公式なグッズで、1個、3ドル45セントなので、400円ほどになります。言いたい放題、トランプ大統領を批判しています。


――この3人が並んでいるのは?

北朝鮮の金正恩委員長とロシアのプーチン大統領が並んだ3ショットですね。


――ここに書いてある「#BBF」ってどういう意味ですか?

「ベストフレンドフォーエバー」の頭文字で、日本で言う「ずっ友」みたいなハッシュタグですね。世界の独裁的なリーダー3人が仲良しだとして、皮肉っている内容なんです。


――トランプ陣営のグッズも野党を批判するものが多そうですね。

はい、例えばこちらのポスターにはトランプ大統領が正義の味方のように描かれていますが、背後に悪役のように描かれているのは実は野党民主党の幹部たちです。その上には「ストップ・ザ・ウィッチ・ハント(魔女狩りをやめろ)」と大きく書かれています。


――なぜ魔女狩りなんですか。

トランプ大統領は、いま注目されているウクライナ疑惑を巡って野党から集中砲火を浴びています。これを罪もないのに罰をうける「魔女狩り」になぞらえて野党を批判しているんです。

ウクライナ疑惑とは簡単にいうと、トランプ大統領が選挙戦を有利に進めるため、最大のライバルとされるバイデン前副大統領をおとしめようとして、大統領の権限を乱用したとされる疑惑です。

実は、ウクライナでバイデンさんのスキャンダルが持ち上がっていて、トランプ大統領はこれを徹底追及しろと、ウクライナの大統領に圧力をかけたとされています。これが職権乱用だと批判されています。野党も公聴会などで批判を展開していて、こんな職権乱用は言語道断だと大統領を辞めさせる「弾劾裁判」に持ち込もうとしています。


――だからウクライナ疑惑に反論するグッズが多いんですね。

はい。でも野党に反論するためだけではなくて、実は、トランプ大統領の巧妙な戦略も隠されています。トランプ氏の支持者の中には、何があっても揺るがない「岩盤支持層」の人たちがたくさんいるんです。そういう人たちに向けては本来なら不利な疑惑さえもあえてグッズにして、キャッチーな言葉で、「敵」を批判することで支持者たちの結束を高めようとしているんです。


――自らへの疑惑を逆手に取っているんですね。

さらに、こうしたグッズ通販は宣伝や資金集めの目的以外にも、さきほどの映像の中でもあったように、有権者の個人情報を集める手段として使われています。氏名、性別、住所、クレジットカード番号などの情報を吸い上げ、支持者がどれだけ拡大しているか、どんなメッセージが刺さるのかなどを測定し、選挙戦略作りに役立てているというわけなんです。


――巧妙ですね。

さらにスピード感もトランプ流です。例えば、このTシャツは、選挙集会でトランプ大統領が言い放ったフレーズをプリントしたものですが、発言があったその日のうちに商品化しネットで販売を開始しました。

実は、グッズをこのスタジオでもお見せしようと、今月初めにワシントン支局で注文したんですが、グッズはなかなか届かなくて、こちらはワシントンの映像なんですが、やっと支局に届いたのが3日前、3週間もかかってしまいました。

一方で、注文した記者には、直後から連日のようにトランプ陣営からの宣伝メールが届いていて、いまも続々と送られ続けています。即日商品化するスピーディーさとは対照的で、その代わり宣伝メールには非常に力を入れていて、トランプ陣営の選挙戦略を象徴していると感じました。

大統領選挙をめぐっては、ウクライナ疑惑のほかに、野党・民主党内の候補者選びも本格化しています。ここから1年、目が離せない展開が続きます。


【the SOCIAL viewより】