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進まぬ産学協同研究 現状と課題は?

2019年11月25日 16:15
進まぬ産学協同研究 現状と課題は?

世の中で議論を呼んでいる話題について、ゲストに意見をうかがう「opinions」。今回のテーマは「産学連携の現状と課題」。株式会社POL代表取締役CEOの加茂倫明氏に話を聞いた。

文部科学省によると「共同研究」「受託研究」「治験」など、大学と企業とのいわゆる産学連携の実施状況について、その総額が2017年度、全体で約960億円と、初めて900億円を超えた。このうち「共同研究」については、約608億円と全体の約63.4%を占め、全体の伸びを牽引している。

一方で、大学等における研究費の民間負担率は、国際的にみても低い状況にあり、政府は、企業から大学等への投資を2025年までに2014年の3倍増とすることを目指している。


――加茂さんに、これからの産学連携の課題についてご意見をうかがいたいと思います。フリップをお願いします。

「ニーズとシーズの橋渡し」です。

我々が「LabBase X」という事業で取り組んでいるのが、この「ニーズとシーズの橋渡し」です。

「ニーズ」というのは、企業新規事業の種になるような技術を探したいという企業のニーズ。一方で「シーズ」というのが、大学の研究室が持っている新たな発明やアイデアといった技術のシーズですね。

そういったものがうまくマッチングすることで、より新しいイノベーションが起きるんじゃないか、というところでやっています。

――学生の方も企業の方が何を考えているのかわからないというところもあると思いますので、そういうのがあるとすごく便利ですよね。

そうですね。やはり企業も、例えば「におい」というキーワードで新規事業を作りたいと、そういったニーズはあったとしても、その「におい」というものに、どういう技術がかんでくるのかっていう事業ニーズを技術ニーズに分解するというところに一定のハードルがあります。

そこは僕たちがお助けするといいますか、単純に企業さんの顕在化したニーズだけではなくて、その事業ニーズを技術ニーズに翻訳するというところもお手伝いさせていただいているというところですね。

具体的には、うちが400名ぐらい博士、ドクターの方のネットワークを抱えていまして「企業さんがこういう技術を求めています」という案件を、彼らにお願いすると、彼らが技術探索を企業の代わりにやってくれて、「この研究室にこんな技術がありますよ」というものを見つけ出してくれる。そして、その上で実際その研究室とマッチングさせていただいて、共同研究という形で出していくことにつながる。そういったことをさせていただいてます。

それによって企業側も研究室側も、お互いに「この研究室にはこういうことができるんだな」とか、「企業さんはこういうことを求めてるんだな」というのを、相互理解につながるというのが、私たちが関与している意義というところですね。


――企業にとってもメリットがあるというわけですね。

まさにそうですね。一方で、研究室にとっても、すごく大きい課題があって、昨今、大学の運営費交付金といわれる国から大学に流れる運営費に使ってくださいというお金がどんどん減ってきています。つまり、大学自体がどんどん稼がないといけなくなってきています。

日本は、海外に比べて民間企業からアカデミアに流れているお金が少ないので、この産学連携が進んでいかないと、どんどん大学とかアカデミア研究というものに国として投資できないという状況になってくるので、そういった、日本のアカデミアを育てていくという意味でも、産学連携は大事だと思っています。


――まだまだ日本は海外に比べると低い状況にあるというわけですね。

まさにそうです。そこに僕たちが介在することによって橋渡しをして、そこの産学連携というのも加速していかないと。日本の科学や社会の発展から考えてすごく大事なピースになってくると思っています。


■加茂倫明氏プロフィル
2016年9月、東京大学在学中に株式会社POLを創業。理系学生と企業とをつなぐダイレクトリクルーティングサービス「LabBase」と研究者向けメディア「Lab-On」を運営。さらに、今年3月には、企業と大学研究者の共同研究をマッチングするサービス「LabBase X」をリリース。研究室×(かける)IT(LabTech)で研究者や理系学生の課題解決をめざしている。

【the SOCIAL opinionsより】