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虐待を受けた子ども、施設でどうケア?

2019年10月31日 14:17
虐待を受けた子ども、施設でどうケア?

世の中で議論を呼んでいる話題について、ゲストに意見を聞く「opinions」。今回の話題は「虐待を受けた子ども、どうケア?」。アフターケア相談所「ゆずりは」所長の高橋亜美さんに聞いた。

厚生労働省によると、全国の児童相談所における児童虐待に関する相談件数は、年々、増加している。また、児童養護施設などに入る前に虐待を受けた経験がある子どもも多く、その割合は、児童養護施設に入所している子どもの約6割、乳児院では約4割、里親に委託されている子どもでは約3割となっている。(※児童養護施設入所児童等調査結果 2013年2月現在)


――高橋さんはこの数字というのはどうご覧になるのか、まずはフリップお願いします。

『暮らしのなかでのあんしん』と書きました。厚労省の調査では施設に入所してくる子たちは6割だとか、乳児院は4割だとかあるんですけど、私たち現場の職員の肌感覚としては全ての子どもは虐待が理由、あるいは虐待という表現がちょっと強いとしたら、不適切な養育環境で育った、または子ども時代を安心して子どもとして生きてこられなかった子たちが施設に入所してきます。

だから施設に入所できたから、もうそれで保護されてよかったねということではなくて、施設での暮らしのなかで、いろんな苦しいものがみんな出てきたりするんですね。その傷ついた心と体の回復のためには、日々の暮らしの中で安心を育んでいくっていうことが大切っていう思いを非常に強く持っています。

虐待を受けた心の傷をケアしていくためには、精神科医の治療であったりとか、心理士のカウンセリングとか、そういうものももちろん併せて必要ではあるんですが、それ以上に、それ以前に、日々の生活をどんなふうに安心できる場にできるかっていうことが、とても求められている、社会的養護の中に求められている支援のひとつだと思っています。


――そう思うと数字っていうのは本当に関係なくて、みんなが安心して暮らせるようにということですよね。そのためには、支援する方々の環境っていうのも大事だと思うんですけど、その部分に課題はあるんでしょうか。

そうですね。大きな大きな課題があって、やっぱり苦しい子どもたちに寄り添っていくためには、寄り添う大人たちが元気であるとか、笑顔であるとか、安心できる存在であることが大事なんだけれど、日々、勤務の中で疲弊してであったりとか、なかなか休みも取りづらかったりだとか、あと子どもたちが出してくるいろんな症状、それは、虐待を受けた結果ではあるんですけど、強く攻撃されたりだとか、そういうのを受け止めていく日々の中でなかなか仕事が続かないっていうことがあります。

私たちも最前線で子どもに寄り添う、大人。職員がもっと労働環境が守られる必要性、またもっと私たちが研修をつんでいくとか、そこに費用を充ててもらうだとか、私たちの専門性をまた育んでいく、安心できる職場であるということがすごく大事だけど、なかなかそこがまだ追いついていない現状もあります。


■高橋亜美さんプロフィル
児童養護施設や里親家庭などを巣立った子どもたちを支援している。原則として18歳になると施設を出て自立を余儀なくされる子どもたち。資金面など生活上のトラブルの相談にのったり就学や就労を支援したりしている。また虐待など不適切な養育をしてしまう親の相談にのるプログラムも実施。誰もが安心できる居場所をつくることを目指している。


【the SOCIAL opinionsより】