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南ア初の黒人女性醸造家 ワインへの思い

2019年8月31日 19:59

30日まで開かれていたTICAD7(=第7回アフリカ開発会議)。その会場にある黒人女性の姿があった。南アフリカで初めての黒人女性のワイン醸造家。様々な苦難を乗り越えてワインに人生をかける思いを取材した。

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東京・銀座で開かれたワインの試飲イベント。ふるまわれたのは、南アフリカ産、「アスリナ・ワイン」。

イベントに登場したヌツィキ・ビエラさん(41)は、黒人女性として南アフリカで初めて自身のワインブランドを確立した醸造家。

ヌツィキさんのワインを飲んだ人は…

ワインソムリエ「フルーティーでぶどうの良さが出ているワインですね」

国際的なコンテストなどで高い評価を受けるヌツィキさん。しかし、成功の陰には、多くの苦難があった。

南アフリカ出身 ヌツィキ・ビエラさん「(アパルトヘイトが)南アフリカの教育制度に与えた影響は知っています。その影響は今の教育制度にも残り、私たちの苦しみにつながっています」

南アフリカでは、かつて「アパルトヘイト」と呼ばれる人種隔離政策がとられ、住む場所や学校なども人種別に隔離された。政府公認で黒人などに対する差別が行われていた。

そんな南アフリカの小さな村で育ったヌツィキさん。将来の夢なども抱けず、10代から家政婦として働いていた。

そのヌツィキさんの人生を大きく変えたのが、ワインだった。アパルトヘイト後の南アフリカでは、黒人からも経営者を育てようという動きがあり、国の主要産業の一つであるワインについて学ぶ黒人学生を募っていた。ヌツィキさんも応募し、奨学金を得てワインについて学ぶ大学への入学を果たした。

ヌツィキ・ビエラさん「黒人女性の私が醸造家として認めてもらうのに苦労しました」

大学では、黒人は少数派。様々な苦労があったが、努力を重ね、2016年、自身のブランドワインを販売するに至った。

横浜で開かれたTICADのイベント。ヌツィキさんは「世界で活躍するアフリカ人女性」として招待された。

ヌツィキ・ビエラさん「様々な市場で売ろうと思いました。アメリカ、ドイツ、オランダ、台湾、ガーナ、日本にも参入しました。重視したのは、業界の中で人脈を築くことです」

格差を乗り越え、活躍するヌツィキさん。今も黒人をめぐる状況は厳しいと話す。

ヌツィキ・ビエラさん「民主主義になって20年以上たち、いくつかは改善されましたが、重要な問題はまだあります。将来、南アフリカの人種差別問題がなくなることを願います」

ヌツィキさんの今の夢は「最高のワインを作る」こと。

ヌツィキ・ビエラさん「ワインは愛・情熱・人との懸け橋となり、関係を作ることができます。ワイン造りに思いと情熱を注ぎ、人々に共有することができます」

格差を乗り越えたヌツィキさん。「ワイン」を通して世界を見据えている。