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セラミックで水質浄化 農業に応用で新展開

2019年8月11日 21:28
セラミックで水質浄化 農業に応用で新展開

長崎県大村市の海や池で行われていた水質浄化作戦が新たな展開を見せている。応用されているのは農業。

主にトマトを栽培している大村市の檜垣庄さん。栽培の際に使う水のため池に藻がはっていた。水質に問題はないが、くみ上げる際、ポンプやフィルターなどに藻が詰まり、手入れは大変だという。そこで、ため池に投入したのは特殊なセラミック。

檜垣庄さん「週に何回も掃除をしなくてはいけない。回数も多いし、時間もかかる。栽培している物の管理の時間をだいぶ取られてしまうので、そのへんがなくなって、管理の方にもっと時間を費やせればいい」

このセラミックを作っているのが、東京や熊本、福岡などに拠点を置く「サンタミネラル」。主に海や池の水質の浄化を手がけている。

サンタミネラル・太西るみ子社長「最近はいろんな所から問い合わせがあって、海外からもけっこうある。ここ半年くらい、とても広がりがある」

セラミックは鉄や亜鉛など約100種類ある植物ミネラルを3種類程度選び、さらにミネラル水、テラプロテクトを混ぜて作る。これまでに、島根県益田市でため池に投入し、約5か月間で国の環境基準を満たす水質に浄化する成果を出したほか、大村市の大村公園内にある「桜田の堀」にも投入された。

「桜田の堀」は市の調査の結果、水質が「下水道並み」で、ヘドロも堆積し、悪臭があった。「桜田の堀」にはセラミック約1.4トンが投入され、約8か月後の7月26日、途中経過の視察で大村市の園田市長が訪れた。

大村市・園田市長「においが全然違う。前は黒っぽくなっていて、端も透けて見えていなかった。メダカはいなかった。メダカが増えるということは水質が良いということ」

サンタミネラルが大村市と共同で水質を調査したところ、ヘドロはほぼ消滅。水質の指標となるCOD(=化学的酸素要求量)は1リットルあたり4ミリグラムと、5倍改善していた。現在はファンを設置し、空気を循環。さらなる浄化が期待される。

東京大学・小野寺節特任教授「こんなにヘドロがすぐにパッと消えるとは考えてなかった」

東京大学の小野寺節特任教授は、セラミックの材料の1つ、テラプロテクトに殺菌効果があるとする論文を発表している。東京大学ではテラプロテクト専門の研究室が発足。来月1日からは講座を始めるという。

東京大学・小野寺節特任教授「持続可能な開発を東京大学が目標にしているので、いろんな池やお堀の水質を良くして、自然を復活させる」

また、生活排水が原因で富栄養化が進み、アオサが増殖していた大村湾もセラミックを投入していたが、生育が確認されなかったという。

大村市・園田市長「今の大村湾の実証実験を広げたい。県、流域自治体はもちろん、国にも理解してもらい、国家的なプロジェクトとして、モデルケースとしてとらえていただけないかなと思っている」

サンタミネラル・太西るみ子社長「実証実験は大村公園で3つ目の池になるので、予定通りいったなという安堵(あんど)感はある。もう少し良くなる。今、メダカがいるので、底にはエビ類がいると思うが、それが確認できれば完璧」

海や池の水質が浄化されると東京大学も注目する事業。農業へと分野を広げ、その応用に注目したい。