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描かれた人が涙する“似顔絵セラピー”とは

2019年8月2日 16:47
描かれた人が涙する“似顔絵セラピー”とは

病院や介護施設を訪れ、患者の似顔絵を描く男性がいる。患者に笑顔と元気を届ける「似顔絵セラピー」の活動を取材した。

描かれた人が涙する“似顔絵セラピー”。

イラストレーターの村岡ケンイチさんは、似顔絵を通して病気の人々を癒す、似顔絵セラピーの活動に取り組んでいる。この日訪れたのは、千葉県にある病院だ。緩和ケア病棟で、重い病気を抱える入院患者を描く。

脳梗塞を患った男性は…。

村岡さん「お仕事はどうされていたんですか?」

男性「タクシーの運転手」

村岡さん「よく回っていた所とかあるんですか?」

男性「上野」

村岡さんが描くのは病気に苦しむ今の姿ではなく元気だった頃の姿だ。会話を通して思い出深い出来事を聞き出し、絵に取り入れている。完成した絵を見ると…

男性「あぁ、素晴らしい。墓場まで持っていきますよ。ひとつだけなんだもん、これ…(涙)」

似顔絵には本人だけでなく、その家族も描く。ロンドンで銀行マンとして働いていた男性患者と、その闘病生活を支える妻は…

妻「ありがとうございます(涙)。あなたと私、よかったね。すごく気持ちが浄化されるというか、主人より、私の方がありがたかったです」

似顔絵セラピーは、患者の家族も癒すようだ。

村岡さん「患者さんは入院されて、自尊心というか自分を肯定できなくなってくる。その方の仕事をやっていた時とか、家族でこういうところに行ったとか、人生の中で本当に大切なストーリー、こんな素晴らしいことをやっていたという肯定するというところをすごく意識しているんです。その絵を見ることで自信が湧いてきたり、また頑張ろうとか、絵が本人を癒し続ける」

似顔絵セラピーは、医学的にも患者の不安やストレスを低減する効果があるとされている。似顔絵をきっかけに、患者と医療スタッフとの会話も増え、医療現場のコミュニケーションにも役立っている。患者がベッドから動けない場合は、村岡さんがベッドの脇で描いている。

2006年からこの活動を始め、これまでに描いた患者は3000人以上。全国の病院や介護施設から依頼を受け付けている。

村岡さん「似顔絵って、ものすごく喜ばれるんですよね。もっと知って頂いて活用して頂けたら、病院としても患者さんにとっても家族にとっても素敵だと思います」

【the SOCIAL lifeより】