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北朝鮮ミサイル発射「米朝協議のゆくえ」は

2019年7月26日 15:55
北朝鮮ミサイル発射「米朝協議のゆくえ」は

世の中で議論を呼んでいる話題について、ゲストに意見を聞く「opinions」。今回の話題は「米朝協議のゆくえ」。日本テレビ・ソウル支局の尼崎拓朗特派員に話を聞いた。

アメリカのトランプ大統領と北朝鮮の金正恩委員長による3回目となる米朝首脳会談が、先月30日、板門店で電撃的に行われた。トランプ大統領が、現職のアメリカ大統領として初めて北朝鮮側に足を踏み入れ、その後、会談が行われた。

会談後、トランプ大統領は2~3週間以内に実務者協議を再開することで金委員長と合意したと明らかにした。それから、25日が過ぎたきのう朝早く、北朝鮮は今年5月以来となるミサイルの発射を行った。


――尼崎さん、協議が再開するのかと思いきや、ミサイルの発射、これはどう見たらいいのでしょう?

北朝鮮は協議の再開を前に「アメリカへの圧迫」を強めているのだと思います。


――「アメリカへの圧迫」ですか?

軍事的な動きを見せつけて非核化をめぐる交渉相手のアメリカを圧迫しているのです。北朝鮮はきのう短距離弾道ミサイルを発射しました。北朝鮮メディアは、金委員長が新型の戦術誘導兵器の発射演習をきのう指導したと報じていますので、これに立ち会っていたものとみられます。

今回の発射について北朝鮮メディアは「平和の握手を演出しながら合同軍事演習の強行など、二重行動を見せている」と韓国を批判しました。

アメリカではなく韓国なのか、という疑問がわくかと思いますが、ここでポイントになるのが「合同軍事演習」です。これは、韓国とアメリカによる軍事演習を指しています。米韓の合同軍事演習は来月、韓国で行われる見通しで、北朝鮮としては、これへの対抗措置としてミサイルを発射したことを強調したかたちです。

軍事的な圧迫を強めることで、完全な非核化が先だとするアメリカから譲歩を引き出したい、そんな思惑があるのだと思います。


――これに対して、アメリカはどのような反応を示しているのでしょうか?

アメリカのポンペオ国務長官は25日、今回の北朝鮮のミサイル発射を問題視しない考えを示しました。またアメリカ国務省は北朝鮮にこれ以上、挑発を自制するよう促したうえで、交渉の再開を求めています。

トランプ大統領は、北朝鮮が、核実験やアメリカ本土に届くといわれる大陸間弾道ミサイルの発射実験を中止したことを大きな成果と強調していて、短距離であれば今のところ気にする様子はありません。

北朝鮮はこうしたトランプ政権の考え方を把握した上で、アメリカに不満があることと、対話の局面を壊すつもりはないこと、2つのメッセージを同時に伝える手段として、短距離弾道ミサイルの発射を選択したのだと考えられます。


――この状況で今後、米朝の両首脳が合意した実務者協議の再開は見通せますか?

協議の再開にはまだ時間がかかりそうです。北朝鮮の李容浩外相が来月2日にタイのバンコクで開催される国際会議に参加しないと通知したことがきのう分かりました。

この会議には例年、米朝両国の外相が出席してきたことから、実務者協議の再開のきっかけになるかと注目されていたのですが、李外相の不参加によって米朝外相の接触は実現しない見通しになりました。

金委員長がアメリカの態度変更を待つデッドラインとしているのが「ことしの年末」です。今後も、硬軟織り交ぜた米朝両国の駆け引きが繰り広げられると思います。

【the SOCIAL opinionsより】