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ヘイトスピーチ条例案、線引きはどこで?

2019年7月23日 15:32
ヘイトスピーチ条例案、線引きはどこで?

ゲストに意見を聞く「opinions」。今回の話題は「ヘイトスピーチと言論の自由」。「NEUT Magazine」編集長の平山潤氏に聞いた。

川崎市は先月、ヘイトスピーチに対する刑事罰を盛り込んだ全国初の差別禁止条例の素案を公表した。条例に違反した場合、司法手続きを経た上で、最大50万円の罰金が科せられる内容も盛り込まれている。また、条例は、インターネットでの表現活動にも適用されることになっている。

ネット上では「罰則がないと、効果ないから賛成」「ヘイトスピーチかどうか線引き難しくない?」「言論の自由が侵されかねないのでは」などの意見が見られた。


――平山さん、まずはフリップをお願いします。

『ニュートラル』と書きました。僕らがつくっている「NEUT Magazine」もニュートラルという言葉から来ています。中立とか中性という意味を持ちながらも、「偏らない」とか「排除しない」という定義をしていて、そういう視点をもっと持てると、ヘイトみたいなネガティブなことも消えていくんじゃないかなという思いから、この『ニュートラル』という言葉をあげました。


――特にヘイトスピーチは、主に外国人に向けての発言で、人種や国籍、宗教などへの誹謗(ひぼう)中傷をいうんですね。それだけを言ってしまうことについて、どんなところが悪いと感じますか。

僕らのかかげている言葉としても、排除しない視点というものをウェブメディアで醸成していければいいなという中で、ヘイトスピーチの定義自体が「排除する」とか、「攻撃する」とか、「侮辱する」とかネガティブな意味があります。そこをもっと誰でもアクセスしやすいウェブマガジンとして、ポジティブなメッセージを生活の中で届けていければいいなと。


――やはり、クリエーティブやポジティブということが大事になるんですね。そうすると「ヘイトスピーチかどうかの線引きが難しい」という意見があります。このあたりはどうでしょう。

ヘイトスピーチは、排除する強い意見だったりするので、相手の意見を取り入れるというか、相手の意見を聞く「余白」があまりないのかなと思います。そこに相手の意見を聞こうとか、会話をしようとか、あるいはどういう人たちが読み取ったときにも、「排除されないリスペクト」みたいなものがあるかどうかは、ヘイトスピーチのひとつの基準かなと思います。


――つまり本質が見えないからヘイトスピーチでこうだと言ってしまうんでしょうか。

SNSで起こっている意見とかも、ネットならではの匿名性とか、顔が見えないところがあると思うので、全てのツイートや匿名のアカウントでもその裏には誰か人がいて、「誰かが傷つくんじゃないか」とかを皆が想像できれば、こういう冷たいことはなくなっていくのかなと思っています。だから、僕らもメディアでは人間関係を築いて、顔出しをしてもらって、活動などを話してもらうということをやっています。


――顔を出すことで大きく変わることがたくさんある?

そうですね、ベーシックな意見かもしれませんが、農作物にもあるような、やはり相手の顔が見えることで愛着というか、こういう人がやっているんだと想像できて、相手にも愛を持って接することができるのかなと思って、顔出しをしてもらっています。


――「言論の自由が侵されかねない」という意見もありますが、こういうことを含めてどんな若者たちが育っていけばいいかと思いますか。

生活の中で、いろんな人やメディアに触れて「いてもいいよね」という、自分を肯定して、相手を否定しないスタンスというか、そういうものがみんなに植えついて――しかも自分の意見も持って、成長できるような環境を築けるようなサポートをメディアとしてやっていければいいなと思います。


■平山潤氏プロフィル
大学卒業後、ウェブメディア「Be inspired!」の編集長を経て、2018年10月、「NEUT Magazine」を創刊、編集長を務めている。マスメディアではタブー視される「セックス」「政治」「人種問題」などのテーマや世間の常識を覆すような新しいアイデアを提案している人々を取り上げ、一般的にエクストリーム(極端で過激)だと思われるテーマや人に光を当てることで、より多くの人々にニュートラルな(排除しない、偏らない)視点を届けたいという。


【the SOCIAL opinionsより】