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キャンベル氏に聞く“若者×選挙” 3

2019年7月19日 18:32
キャンベル氏に聞く“若者×選挙” 3

この夏の参議院議員選挙を控え「the SOCIAL」では、「若者が投票に参加する意義について」ロバート・キャンベル氏に聞いた。


Q:今、国籍が違うなど他者への理解が必要であるというお話がありましたが、キャンベルさんはLGBTを公表されています。LGBTといった社会的に他人からマイノリティーと見られる可能性のあるような観点から、選挙に求めるものはありますか?

キャンベル氏:LGBTのことでいうと、これはなぜ投票が大事か、なぜ投票所に行くことが大事なのかがわかりやすいですよね。なぜかというと、今国政が氷河のようにものすごくゆっくりと動いているんですね。数年前から「理解がまだ深まっていないからまずみんなで理解しよう」ということを政権与党が言って、委員会は作っているんだけれども、積極的に動いていない。積極的に動いていないというのは相対的な問題で、県とか市とか区とかそれからその下の、下も上もないんだけれども、民間のいろいろな取り組みを見ていると、本当に目を剥くような速度で状況が変わっているわけですね。

ちょうど数日前(取材時は6/25)に茨城県県庁が、県として初めてLGBTの人達に対してパートナーシップ宣言を認めた。そうすると、県営住宅に二人で申請をすることができたり、入院をしたときの保証人になったり、手術の同意をパートナーがセクシュアルマイノリティであっても認める。それから民間に対して協力を呼びかけるということもできる。これは県として初めてなんですね。

でもその前に渋谷区があったり、いろんな所謂、下位にある自治体の中では次々に暗い夜空の中に一個一個星のように、それが4年前から少しずつ光り始めていて、星がものすごく増えているんですね。でもその増え方というのは、身近な星が光っているわけであって、その先の県であるとかそのずーっと何光年先にやはり国政があって、それがいつ動くのかということ。

実は茨城県でも県議の与党側の人達は、「時期尚早だ」というふうに言っていて、県庁が進めたいと言っているのに対して、「待った」をかけようとしたんだけど、県庁がその提言も参考にしながら、いろんな住民の声であるパブリックコメントなどを経て、今が時期だと言って踏み切ったんですね。

だから今、日本では政治の中では層が3つ、4つぐらいあって、一番有権者に近い区議会や県議会、あるいはその下の一番近いところとかで、LGBTの人達の権利を拡張することによって失われることは何もない、混乱は起きないということを肌だけではなくて、きちんとエビデンスをとってわかっている訳です。

僕は結構楽観主義者ですから、それがこれから遠くない将来に向けて、やっとカタツムリがアジサイの葉っぱを這うようにゆっくりゆっくりと動いている。国政も動かざるを得ない状況になるんじゃないかなと思っているんです。これもやっぱり選挙ですよね。

選挙の与党野党を見ているとこの議論は「あんまり建設的じゃない、何になるの?」って思うことは、スタンドプレーに見えることもいっぱいあるんだけれども、それはその下の県議会とか区議会とか市議会とかが日常に直結していることを毎日のようにやっていて、一歩進んでいるとか、人によっては全然進んでない後退しているように見えるかもしれませんけれども、とにかく実際に動いているんですね。その辺のところに目線を合わせて、どういうふうに今自分の住んでいる地域が、どういうふうになっているかということを一回棚卸しするというか、自分の目で在庫管理するとすごく面白いですね。

だからLGBTが一つのサンプルだと思うんですね。試金石というのかな。社会がどういう速度で動いているかだけではなくて、一つのスパイラルになっているんですよね。ある層がすごく速くキビキビと動いていて、上の層があんまり動いていないように、日本の場合はトップがゆっくりと氷河のようにしか動かないっていうところがある。どういう力があれば結婚の平等とか、成熟した社会の中で認められている他の普通の権利がいつになったらできるのか、ということを、一人一人が投票行動から考えるとすごくわかりやすい。そこが大事だと考えてます。


Q:今回、若者が選挙にどうしたら行ってもらえるかというテーマでしたが、正直世の中って若者がすぐ投票行動に移るところまでいっていないと思うんです。そこで最後に、キャンベルさんが若い人たちに向けて、期待していることを一言お願いします。

キャンベル氏:年長者として、僕は若い人たちにお願いしたいんですね。投票してくださいと。中堅管理者の層からすると、大体人生設計が固まっていて、誰でも自分が今まで注ぎ込んできた税金を回収しようと思うし、社会の動きの速度とかは自分にとって気持ちいいものがあり、若い子供の世代たちがこれからどうあるべきかという考えはあるわけですよ。

だけどそれはある層、例えば60代から上の人たちだけが予算措置も外交も防衛もいろんなことを決めるということは、今はいいかもしれない。20年先30年先に僕は生きてるかもしれないけど、30年先のことを決めるにははっきり言って僕に任せてはいけないと思うんですよ。

僕というのは僕の世代だけに下駄を預けるということは無謀だと思うんです。社会として不健全です。だから、若い人が投票に行くっていうときは、本人はまだちょっと考えが足りないなとか、いや騙されているなとかという風に思うんだけど、マスで見るとそれが10人20人1000人になれば、僕ら世代とは違う角度で世の中を見てこれからの20年30年を想像している。その想像が働いているはずだから、その想像に賭けてやっぱり投票をしてほしいと思う。

これは理想的なこれからの人達たちに対する愛情のコメントでもなんでもなくて功利的な、自分がこれからも健康な空気のすごくきれいな、人がお互いの力というものを認め合えるような日本の社会に僕はやっぱり暮らし続けたいと思うんです。そのために、若い人たちの想像力と手腕というものが一票の中に入っていないとできない。崩れる砂が流れるように、みるみるそうじゃない暗い方向に世の中が引っ張られていくんじゃないかなとおそれることがあります。お願いします、投票してください。