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先生の働き方改革 まずは「前提を疑う」

2019年7月3日 19:21
先生の働き方改革 まずは「前提を疑う」

世の中で議論を呼んでいる話題について、ゲストに意見を聞く「opinions」。今回の話題は「日本の先生 世界一忙しい」。認定NPO法人ティーチ・フォー・ジャパン CEOの中原健聡氏に聞いた。

OECD(=経済協力開発機構)が調査した「教員の仕事時間」によると、中学校教員の1週間あたりの勤務時間は、48の参加国、地域の平均が38.3時間なのに対し、日本は56時間と最も長くなった。

一方、技能や知識、専門性を開発するための活動「職能開発」に使った時間は、参加国平均が2時間のところ、0.6時間と最も短くなっている。

先生の勤務時間について、ネット上ではこんな意見が見られた。

「先生はほんとにブラック過ぎる」
「小手先の時間規制ではなく、根本から見直しを」
「部活を地域人材に委託するのが始まっている」


――この話題について中原さんにフリップを書いていただきました。

「前提を疑う」です。

今回、労働時間の話があがっていますが、働き方改革というキーワードがカギになっていると思います。働き方改革で重要なことは、まず、そもそも何のために仕事をしているかです。

例えば学校の現場でどういった事実を生み出したいのか、学校教育でどういう効果を目指すのかというとき、大人を含めた全てが子どもにとっては環境の一部なので、カリキュラム、人、教具などを含めてどういった環境を設定すべきなのか。そのためには何のためにそれを設定するのかが大切だと思います。

ですので“偏差値”を目指すのではなく、“生きる力”とは何なのかとか、そういったものを全員が話し合うための場所にしたいですね。


――一方で、日本の先生が世界一忙しいということが数字で表れていますが、やはり仕事といいますか、やることが多いのでしょうか。

いま日本は、教育改革の大きな転機を迎えていて、学習指導要領の変化により、教科で取り扱う内容が変わったり、先生が仕事でカバーする範囲も広がっています。また専門性が高まっているので先生が全部対応しようとすると、補いきれないというのはあります。


――親御さんの要求もあってケアしないといけないこともたくさんあると思いますが、では、どうしたらよいのでしょうか。

ですので「前提を疑う」ということでいうと、学校現場を構築する人を教員養成課程を経た人だけで、構築するのがベストなのか。そうではなく、全く別の新たな学校を構築するやり方というのもあるのではないかと、既存の先生と協働しながら、さまざまな人たちが教育の目的をにぎり直した環境を整備することがとても重要だと思います。

あとは本当に思い切ったことをしてほしいと思います。いまやっている仕事を全部なくしてみるとか。しかし授業をなくしてしまうと子どもたちに不都合が出ます。ですので、なくしてしまうと本当に不都合が生じるものをしっかりと選定すべきです。


――このニュースを見ると本当に日本の先生は大変だなと思うのですが、このニュースをきっかけに、いま一度、仕事内容とかケア内容とかを見直してみるということが必要なのでしょうか。

日本の先生は世界一忙しいといわれていますが、学校の先生が世界一クリエーティブな仕事となる時代がくると思っています。


――と、いいますのは?

例えば、教員免許というものは、とらえ方によっては理科の免許や数学の免許は、目の前の事実、紙とかテレビとかを自分の専門性に置き換えて話ができるんですね。いわば魔法のライセンスみたいなものなんですよ。そういうとらえ方をして、自分自身の存在価値をクリエーティブにどんどん発信してほしいと思います。日本だけではなく、世界中の先生を僕は応援しています。

【the SOCIAL opinionsより】