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障害者雇用、現場から知った「大切なこと」

2019年3月29日 15:30
障害者雇用、現場から知った「大切なこと」

世の中で議論を呼んでいる話題について、ゲストに意見を聞く「opinions」。今回の話題は「どうなった?障害者雇用水増し問題」。NPO法人・Ubdobe代表理事の岡勇樹氏に聞いた。

去年発覚した、中央省庁における「障害者雇用水増し問題」を受け、初めて障害者を対象とした国家公務員採用試験が先月、行われた。その結果、8712人の応募者のうち、754人が合格した。障害者の雇用については原則、「障害者法定雇用率」が企業や行政機関に義務づけられている。

「法定雇用率」を下回った場合、これまでは原則、民間企業では不足1人あたり、月に5万円を国に支払わなければならなかった。しかし、行政機関には、そのような規定がなかった。そこで今後、行政機関が「法定雇用率」を下回った場合、不足1人につき、年に60万円を庁費から減額する法律改正が予定されている。


――これで今後の障害者の雇用は進むのでしょうか。

進むか、進まないかといえば、もちろん整備されて進んでいくと思うんです。そこで『ONE ON ONE』と書きました。これは1対1とか個別みたいな意味なんですけど、僕がかつて福祉の訪問介護の仕事をしていた時代があって、その時に出会ったおじいちゃんがいました。脳性まひで重度障害者と言われる人で、手も足も動かないし、しゃべっていることもあまり何言っているかわからない、ずっと家に閉じこもっている感じで過ごしていました。

僕がヘルパーとして入った時に、もうちょっと外に出ようということで誘ったんです。そうすると徐々に遊びに出て、その次に、友達の女の子を呼んで、おじいちゃんと一緒にご飯を食べるという会を開き始めました。そうしたら、そのおじいちゃんは自分で食べられないので、食事介助が必要で、僕がその女の子に食事介助の方法を教えたりしてたら、いつの間にか2人で会話しながら食事をする風景が生まれました。それがやはり楽しいみたいなところで、どんどん外出をしはじめたんです。

そういう障害者雇用とか健常者という言葉だけで語っていても、あまりリアル感がないというか、もっと○○さんというレベルで、お互い知り合った後で、そういう障害者雇用の問題とかを話し合ったりとか、考えたりするということが必要なのかなと思います。もちろん法整備が進めば、進むものは進みますけど、就職後のケアだったり、生活の部分、そういったところは、フラットに話し合っていけるような文化になっていけばいいなと思っています。僕らもそんな活動をしています。


――確かに就職活動の前に、どれだけ多くの人が、障害をもっている人と話をしたことがあるのかと、そういうことも本当に大事になってきますね。

そうですね、まさに受け入れ側の事業所の社員のみなさんも、どんな症状かもわからない障害者の人が入ってきても割と戸惑うこともあると思うので、そのへんがスムーズに行くように、法律だけでは整備できないような部分も整備していけたらいいなと思います。


――そういうみなさんが交流できる機会を創出しているのがまさに…

Ubdobeです(笑)。


■岡勇樹氏プロフィル
NPO法人・Ubdobe代表理事。福祉施設の子どもと健常者の子どもが一緒に遊ぶイベントや医療福祉を学んで遊べるクラブイベントなど、エンターテインメントを通じて医療や福祉に興味がない人にも楽しみながら関心をもってもらう活動を行っている。学生時代は、音楽活動に没頭。サラリーマン生活を経て、「音楽療法」と出会い福祉の道へ。現在はイベントの企画だけでなく、デジタルアート型リハビリテーションの開発、行政からのイベント制作やコンテンツデザインなども請け負っている。


【the SOCIAL opinionsより】