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皇太子さま59歳の誕生日 会見全文3/4

2019年2月23日 0:56

(宮内記者会代表質問)
【問4】
秋篠宮さまは昨年のお誕生日の記者会見で、新天皇が一代一度限り臨む大嘗祭のあり方について持論を述べられました。即位にかかわる一連の皇室行事について、殿下はどうあるべきだとお考えでしょうか。


殿 下
    即位に関わる一連の皇室行事の在り方については、平成のお代替わりの折の前例を踏まえ、政府において十分な検討を行った上で決定したものと理解をしております。また、様々な事項の決定については、私も折々に説明を受けてきております。したがいまして、今回政府が決定をした内容について、私がこの場で何か述べることは控えたいと思います。


【問5】
残り2か月余りで「平成」が幕を閉じます。「平成」とはどのような時代だったとお考えでしょうか。


殿 下
    平成の始まりというときに、私は、同じ年に起こったベルリンの壁の崩壊を思い起こします。私は、その2年前の昭和62年に、ベルリン日独センターの開所式に出席するため、当時の西ドイツのベルリンに行きました。その時見た、冷たく聳(そび)えるベルリンの壁は、人々を物理的にも心理的にも隔てる東西の冷戦の象徴として、記憶に深く刻み込まれるものでした。その後、平成元年11月にベルリンの壁が崩壊し、東西のベルリン市民が壁を登っている姿に、新たな時代の到来を感じました。平成という時代は正に、この新しい世界の動きとともに始まったと言えると思います。

    冷戦の終結を受けて、二極の対立構造はなくなったものの、各地で内戦や地域紛争が増加しました。これに対して、日本は、開発援助のほか、復興支援や人道支援も積極的に行うことにより、世界の人々から高く評価されるようになりました。また、ノーベル賞の受賞や、スポーツ、文化といった分野でも、日本人が国際的に評価され、あるいは活躍する場面が増えましたが、これは平成時代の特徴ではないかと思います。オリンピックを例に挙げるまでもなく、平成を通じて特に、十代の中高生を始めとした若い人たちの活躍が目立ったように感じ、とてもうれしく思います。陛下がおっしゃっているように、平成が戦争のない時代として終わろうとしているわけですが、戦後長く続いてきた平和な日本の社会において、この国の未来を担う若い人たちが、夢を大切にしながら自分の能力を発揮できる環境が整ってきたことの証(あかし)であると思います。私も、これまでいろいろな場で若い方々と御一緒する機会を大切にし、その熱意や息吹を感じて心強く思ってまいりましたが、これからも若い世代の活躍を願いつつ、見守っていきたいと思っております。

    また、平成は、人々の生活様式や価値観が多様化した時代とも言えると思います。それは、ITその他の科学技術の飛躍的発展によって、更に推し進められた部分もあると思います。今後は、この多様性を、各々が寛容の精神をもって受け入れ、お互いを高め合い、更に発展させていくことが大切になっていくものと思います。

    他方で、少子化や高齢化の進行は、日本のみならず、多くの国で大きな社会問題となっています。今後の日本にとり、諸外国の経験や知識を参考にしながら、この問題について考えていくことが必要な時代になっていると思います。

    平成は、また、地震や津波、台風や集中豪雨といった数多くの自然災害に見舞われた時代でもありました。多くの人が命を落とされ、また、生活の基盤を失われたことは、大変心の痛むことでした。そうした中で、災害救助や復旧・復興の折に示された「絆(きずな)」とも称される助け合いの精神には、日本の人々の優しさや秘めた強さを見る思いがいたしました。そうした不幸な出来事が発生する度に、両陛下には、被災地に向かわれ、困難な状況にある人々に寄り添ってこられるなど、お力を尽くしてこられました。両陛下が、国民と共にありたいと常に願われ、そのお気持ちを体現してこられたことが、私の心に深く残るものと思います。