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“廃虚”マンション 解体できない理由は…

2019年2月19日 19:16
“廃虚”マンション 解体できない理由は…

壁がボロボロに崩れ、“廃虚”になったマンション。崩壊してしまわないかと、不安の声が上がっている。ただ、簡単には解体できない事情もある。こうした“廃虚”をめぐる問題は、全国有数の温泉地でも起きていた。

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滋賀県野洲市。多くの車が行き交う県道沿いに問題のマンションがある。

築47年の鉄骨3階建てのマンション。外壁が崩れてしまい、部屋の中がむき出しの状態になっている。

建物の周囲には、うずたかく積まれたままの多くの「がれき」。階段の部分も腐食が進んでいて、上の階にのぼることができないような状態だった。

崩落の危険性が高まっているマンション。周辺の住民の不安は、ほかにもあった。壁がはがれ落ちた部分を見てみると、鉄骨に吹き付けられた有害な「アスベスト」が露出。健康被害を引き起こす危険性が出ている。

10年ほど前から人の住まない“廃虚”と化しているというマンション。

“廃虚”マンションの所有者のひとり「見るのも怖いです。たぶん周辺の人もそう思っているし、一日でも早く解体が進めばなと思っています」

では、なぜ解体されないまま、今も放置されているのだろうか。

野洲市が取材に応じた。

滋賀・野洲市 山仲善彰市長「(所有者)9人のうち8人は自ら壊したいと思っているので、そのあたり法的にどう解決していくのかが課題」

マンションの所有者は9人。このうち8人が望んでいるように、自らの手で解体することが基本だという。市は今後「空き家対策特別措置法」に基づき、取り壊しの命令を行う予定だが、それでも9人の合意による自主解体が行われない場合、「行政代執行」で解体に踏み切る方針だという。

しかし、そこにも難しい問題があった。

滋賀・野洲市 山仲善彰市長「大規模な解体になりますし、経費も伴うので、困難を抱えています」

行政代執行は最短で11月に行われるが、解体費用は3000万円~4000万円かかる見通しだという。

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一方、渓谷を挟んで旅館やホテルがたち並ぶ栃木県の鬼怒川温泉。年間およそ200万人が訪れる全国有数の温泉街。美しい景観がある一方で、観光客からはこんな声もあがっている。

観光客「(Q.何を撮影した?)廃虚。廃虚は興味あるからいいけど、温泉街にあるのはあんまり良くないのかなと」

この温泉街でも“廃虚”の問題を抱えている。

日光市によると、いくつかの廃業した旅館やホテルは、周囲に危険を及ぼす可能性があるが、市が解体に踏み切るのは困難だという。

日光市役所総合政策課・鈴木和仁課長「行政代執行をした場合、ある程度の市の負担が発生してくるので、そこの財源を確保しないとなかなか(行政代執行に)踏み切れない。ホテルを撤去するだけでも約2億円くらいかかるととらえている」

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先月、総務省が発表した調査結果によると、自治体が「代執行」の費用を全額回収できたケースはわずか1割ほど。つまり、民間の建物の解体に多額の税金を費やす結果になることが多い。

“廃虚マンション”の問題を抱える野洲市。

滋賀・野洲市 山仲善彰市長「小さな家でも(解体に)数百万円、今回の場合は数千万円、市民の貴重な財源をそこにあてていいのか。財源の問題も大きな課題」

“廃虚”は倒壊の危険などがあるとして全国で社会問題化しており、さらなる抜本的な対策が求められている。