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伝統構法「石場建て」で木造住宅を建築

2019年2月3日 9:47
伝統構法「石場建て」で木造住宅を建築

母親のために家を新築している徳島市の建築士。選んだのは日本家屋などで古くから使われてきた伝統的な「石場建て」と呼ばれる構法だった。

徳島市大原町に建築中の木造住宅。「石場建て」という伝統構法で建てられている。

徳島市で江戸時代に建築された丈六寺の本堂をはじめ、古い日本家屋はほとんどが石場建てだった。特徴は、基礎として敷いた石の上に柱を置くこと。建物は石の上にのっているだけで、固定はされていない。しかし、現在の建築基準法では、基本的に基礎と土台をアンカーボルトでつなぐ必要があるため、石場建ての建物の新築は難しくなった。

この伝統構法に興味を持ち、新たに挑戦してみようと決意したのが、徳島市で事務所を構える一級建築士、清水裕且さん。

一級建築士・清水裕且さん(43)「建築の設計をやっていくうちに、伝統的な建築物がかっこいいと思ってきて。(石場建ては)なかなか、お客さんも『ウン』と言ってくれないし、今回たまたま、うちが(母)親に家をつくるということで、設計者としても、やりたいことを表現しようと思ってチャレンジしてみた」

今回設計したのは建坪約20坪の高床式の平屋。しかし、建築基準法をクリアするため、構造の安全性の証明などに約2年かかった。石場建ての構法は一般的にコストが高くなり、今回の建築費は3500万円を予定している。

石場建ての家を建てることができる大工も全国的に少なくなっている。清水さんは、滋賀県草津市の大工で経験豊富な宮内寿和さんに施工を依頼した。

家の骨組みとなる柱には徳島県産の木頭スギを使う。この日は滋賀県にある宮内さんの作業場で、徳島から運び込んだスギに、加工のための印をつける「墨付け」という作業がおこなわれていた。

宮内建築・宮内寿和さん「大工をしている限りみんな伝統構法をやりたい。墨をつけて刻んで、木だけで組むということをやりたいが、なかなかそういう仕事にめぐり合えないし。そういう風な要望があって(自分に)言ってもらえるのはうれしい。大工冥利(みょうり)に尽きる」

墨付け作業から約1年。加工が終わり、徳島市大原町の建築現場に木材が運ばれて来た。

作業にあたるのは、棟梁(とうりょう)の宮内さんのほか9人の大工。

設計図に合わせて、基礎となる石の上に木材を組み上げていく。石場建てには、通気性がよく、床下が腐りにくいことや、柱が傷んでも、その部分の取り換えがしやすいので、建物自体が長持ちするなどのメリットがあるそうだ。

結合部にはクギなどの金属は一切使わない。木と木のつなぎ目にはくさびを打ち込んで固定し、くみ上げていく。

大工は実は全員、県外からの参加。棟梁(とうりょう)の宮内さんの技術を学ぼうと集まってきた。

岡山県から参加 ジョナサン・ストーレンマイヤーさん「地域によって見たものが違うので、学ぶところがいっぱいあって、石場建ては基準的なことはあるけど、ところどころで違うように組んであるから、参考になることがいっぱいあると思った」

三重県から参加 加藤千香子さん「この構法でどういう強さがあるかや、やり方とかも全て学んで帰りたい」

特にトラブルもなく、3日間で棟上げの段階まで進んだ。

大工(棟梁)・宮内寿和さん「(石場建てが)家を建てたい時の選択肢の土俵にのるようになってほしい。こればっかり建てていければ、大工としてはすごく幸せだけども、やはり、いろんな方(施主)がいて、いろんな住み方があるので、家を建てる選択肢の中で、石場建ての伝統構法も選択肢の1つとして選んでもらえるように、これからもっとアピールしていきたい」

清水裕且さん「昔の人が培ってきた知恵を反映できる建築ということで、こういうスタイルを選んだ。過去に戻っていくというイメージではなく、この家も昔ながらだが、全てがそういうわけではないので、現在にあうような作り方をしていけばいい」

Q.石場建ては今後広がるか?

清水裕且さん「広がっていく。広げていく」

母のために清水さんがこだわりぬいた石場建ての家は、5月初旬に完成予定。