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アスリート“引退後の不安”どう解決するか

2019年2月1日 15:30
アスリート“引退後の不安”どう解決するか

世の中で議論を呼んでいる話題について、ゲストに意見を聞く「opinions」。今回の話題は「アスリートに『デュアルキャリア』を!」。元ハンドボール日本代表キャプテン・東俊介氏に聞いた。

アスリートの「デュアルキャリア」とは、引退後から新たなキャリアを積み上げるのでなく、現役のうちから仕事と両立させ、二重のキャリアづくりを行う考え方。就職情報などを提供するマイナビは去年12月から競技を続けながら働きたい選手たちと採用を希望する企業とマッチングするサービスを始めた。主に正社員か契約社員としての雇用で、引退後の不安を減らしながら、競技を継続できる環境を整えるのが狙いだ。

――東さん、いかがでしょう。

『1日24時間を効率的に!』と書きました。アスリートって結構言われるのが、「現役生活の間は競技に集中しよう」です。1日で24時間あるじゃないですか。そうすると8時間睡眠をとったとして、8時間トレーニングとコンディショニングに費やしても、8時間残っているわけですね。その空いている時間にどういう活動をするかが今後のキャリアに生きてくると思います。

競技だけじゃなくて、いろんな知識を得たり、様々な人たちと出会うことが、これからのキャリアに生きてくると思います。そういう活動をしていただきたいと思って、この『1日24時間を効率的に!』を書きました。

――東さん自身は、競技生活を続けていた中で、仕事との割合はどうだったんでしょう。

私はメーカーで働いていましたが、メーカーの実業団チームでは、14時30分まで業務に携わって、15時~18時30分まで(練習をやっていました)。だからもっと定時まで働くことができたら、今にして思えばよかったなと思います。もちろんプロフェッショナルを否定しているわけではなくて、プロフェッショナルな人たちも空いている時間というのはあるはずなので、そこでどういう活動をするかが大事になってくると思います。

――東さんの今の仕事にもつながっているきっかけとなったのは、おそらくハンドボールのマーケティングだと思うんですが、その時、どんなものが見えたんですか。

私自身は、日本では、なかなかメジャースポーツといえないハンドボールをマーケティングビジネスにすることにずっと携わっていたんですが、4年間やってきた中で思ったのは、自分自身にもっとビジネスの力や影響力とかがないと、ハンドボールは変えられないなと感じました。

そういうビジネス的に影響力を持ったり、ビジネススキルを持ったアスリートがもっと増えていく。1人が引っ張るんじゃなくて、みんながボトムアップできるような体制をつくることが、いろんなスポーツをビジネスにしていくには、近道なんじゃないかなと今は強く思っています。

――そう思うと、最初に書いてもらった現役生活を続けながらもセカンドキャリアに向けて、現役の頃から準備するということが、本当に大事になってくるということですね。

そうですね、素晴らしい事業がオリパラに向けて始まっているなという気はします。アスリートというのは、どうしてもセカンドキャリアというのがすぐに来るので、今後の日本でも普通のビジネスパーソンにもセカンドキャリアというのが来ると思いますので、そこの部分で生きるためにも、まずはアスリートから「デュアルキャリア」というのをやっていくのが、日本全体にとってもいいのかなと思います。

■東俊介氏プロフィル
元ハンドボール日本代表キャプテンの経験を生かし、スポーツ事業を中心に複数社でパラレルワーカーとして活動している。実業団時代は9度の日本一に輝き、アテネ五輪アジア予選など数々の国際大会に出場。現役引退後、ハンドボールをメジャーにするという夢のもと普及に尽力した。しかし、それにはビジネスの力が必要と痛感。現在はアスリートや経営者、クリエイターなど幅広い人脈と知見を生かし、スポーツビジネスのコンサルティングを実施。アスリートとビジネスパーソンをつなぐ交流会なども手がけている。

【the SOCIAL opinionsより】