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英“合意なき離脱”か ある商品が人気に…

2019年1月30日 18:36

EU(=ヨーロッパ連合)からの離脱期限まで2か月となった29日、イギリス議会は、EUに対して再交渉を求めるメイ首相の方針を支持した。

イギリスでは「合意なき離脱」のシナリオがさらに現実味を増す中、ある商品に人気が集まっている。

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イギリス議会前では、29日もEU離脱派と残留派が抗議活動を行っていた。

EU離脱派「バイバイEU、バイバイEU」「俺らは離脱するんだよ!」

こうした中、議会では3月29日の離脱期限の延期を求める案の採決が行われた。

イギリス議会下院・バーコウ議長「賛成298、反対321」

メイ首相にとって、離脱の延期はもっとも避けたいシナリオ。辛くも勝利した形だが、一方で、EUと合意を結べないまま3月29日に離脱する可能性は引き続き残ったままとなる。

「合意なき離脱」となれば、イギリスとEUの間に、現在は必要ない税関での荷物チェックが復活する。物流が滞り、スーパーなどに商品が届かないことが心配されている。

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ロンドンにある日本料理店。この日入荷していたマグロはスペイン産のもの。ほかにも多くの食材をEUからの輸入に頼っている。

日本料理店料理長・日山浩輝さん「(食材の)8割くらいがEU域内から」

合意なき離脱となれば、メニューに大きな影響が出るという。

日本料理店料理長・日山浩輝さん「入ってくる材料で新しいメニューを考えるしかない」

食材は鮮度が勝負のため、ほかの業種のように事前に在庫を増やして乗り切ることができないと、頭を抱える。

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一方、「合意なき離脱」で、市民の間にモノ不足の懸念が広がる中、意外な商品が注目されている。

倉庫で出荷準備が進んでいたのは「EU離脱箱」と名付けられた段ボール箱。箱の中には、例えば何種類ものフリーズドライの食べ物や、水道が止まった時に備えて水をろ過できる装置、さらにガスが止まった時に備えて、着火剤も入っている。

保存食は、水やお湯を加えて10分ほどで食べられるようになる。値段は1箱で4万5000円。スーパーからモノが消えても30日間生存できるという、この「EU離脱サバイバルキット」への注文が、相次いでいるという。

英・食品会社担当者「予想以上の反響で、毎日25件の注文が入っています。これまでに600個以上販売しました」

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大手企業も対応を加速させている。ソニーは、ヨーロッパ事業の本社を離脱期限の3月29日付でイギリスからオランダに登記を移すことを明らかにした。

掃除機でおなじみのダイソンも、シンガポールへの本社移転を発表。企業のイギリス離れが加速しつつある。

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本当に合意なき離脱は起きるのか。カギを握るのは、与党保守党の中でメイ首相の方針に反対する、いわゆる「強硬離脱派」の議員。

【強硬離脱派】保守党・エイメス議員「メイ首相の離脱協定案には根本的に欠陥がある。合意できなくてもそのまま離脱すればいい」

「合意なき離脱」でも問題ないと胸を張る。

【強硬離脱派】保守党・エイメス議員「食料や薬が品切れになるという人がいるが、そんなこと起きるわけがない」

メイ首相は29日、EUと再交渉して離脱協定案の大幅な変更を求める考えを示したが、EU側は一貫して再交渉には応じない方針を示していて、実現性は不透明なままだ。