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外国人に“選ばれる国”になるためには?

2019年1月30日 16:28
外国人に“選ばれる国”になるためには?

世の中で議論を呼んでいる話題について、ゲストに意見を聞く「opinions」。今回の話題は「日本に住む外国人が困っていること」。NPO法人・多文化共生リソースセンター東海・代表理事の土井佳彦氏に聞きました。

外国人向けのメディアを運営する会社が、日本に住む外国人に「生活する上で困っていること」を調査した。最も多かったのが「手続きが難しい(26.3%)」、次いで「日本語が出来ない(21.1%)」「情報にアクセスしにくい(14.9%)」「外国人に合った教育環境が少ない(13.2%)」となった。具体的には「手続きが外国語に対応していない」「携帯電話、不動産…手続きが多すぎる」「海外のクレジットカードに対応していない」などの声があったという。


――まずはフリップをお願いします。

『選ばれる』と書きました。今、例がありましたが外国人の方で日本の生活で困っていることはあると思うんです。国も4月から、さらに多くの外国人の方を受け入れていこうと言っていますが、その時に、どの国からどんな仕事の人を何人ぐらい受け入れていこうかという議論をしています。

しかし、それはあくまで日本側の都合であって、逆に言うと、海外から日本に来てくれるかもしれない外国人の立場に立ってみると、今、世界200以上ある国の中で、日本が「選ばれる国」「選ばれる会社」「選ばれる地域」になっているかというのが、私の中の懸念になっています。

逆に言うと日本以外の他の国に行ったがいいんじゃないかとか思う人も中にはいるんじゃないかと思うんですね。例えばオーストラリアなんかでは、移住した人たちが、言葉ができない中で役所や病院に行ったりする際に、通訳を病院などが用意してくれるんですね。一方で日本では、病院に行くのが難しいし、自分で通訳を探していくという地域がほとんどなんです。

そうすると、病院に行くのを戸惑って、結局諦めたりするようなことも中にはあるんですが、そうすると今度は病院側も「うちには外国人は来ないから通訳は必要ない」ということで、悪循環ができてしまっている感じがするんです。そういった時に、「あそこの病院は通訳さんがいるよ」というと、そういうところを外国人の方は選んで行かれるので、そこできっちり対応してもらうということができています。


――相手の立場になって、いろんなことを考える必要があるということですね。

もちろん日本で生活する上では、日本語を覚えてもらうことはとても大事だと思うんですが、今日本には1700位、自治体がある中で、日本語の教室があるという自治体は、まだ3分の1ぐらいしかないそうなんです。だから外国人に日本語を覚えてもらいたい、日本地域になじんでもらいたいという気持ちは、当然、私もわかるんですが、じゃあいったいどこに行ったら、日本語を勉強できるか、どこに行ったら地域のことを教えてくれるか、という環境をつくっていかないと、期待だけをしても目指す状態にはなっていかないと思います。そういった環境をつくっていくことは大事だなと思っています。


――「選ばれる」にはどうすればいいかというところまで、しっかり思いを巡らせることが大事なのかもしれませんね。

そうですね。ただ日本人も海外に滞在した人はたくさんいると思うので、その時、自分がどういうところに困ったかというところを考えると、おのずと分かってくると思います。


■土井佳彦氏プロフィル
NPO法人・多文化共生リソースセンター東海・代表理事。日本人だけでなく、外国人にとっても暮らしやすい社会になるための支援事業などを手がけている。大学で日本語教育を学んだ後、留学生や技術研修生らを対象に日本語を教えてきた。同時に、地域の日本語教室にボランティアとして参加。そこで、日本で暮らす外国人が抱える課題に気づき、支援活動を始めた。2008年にはNPOの設立に参画。外国人のための日本語学習環境の整備や災害時の多言語対応の充実などを通じて、言語や文化、国籍などの違いにかかわらず、だれもが夢と希望を持って楽しく暮らせる「多文化共生社会」づくりをすすめている。


【the SOCIAL opinionsより】