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果物“新品種”東北で続々開発 その理由は

2019年1月28日 19:11

インスタ映えしそうな真っ赤に色づいたイチゴ。今、東北で、果物の新しい品種の開発が盛んだ。中には、なんと500円玉より大きく実ったサクランボも。その背景には、深刻な農家の悩みがあった。

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クリームが見えなくなるほど真っ赤なイチゴをふんだんに乗せたストロベリーパフェ。

甘さとほどよい酸味が口いっぱいに広がるが、このイチゴ、実はただのイチゴではない。よく見てみると、外側だけでなく、中の果肉まで赤い。

実はこれ、宮城県が独自に開発し、先月販売開始されたばかりの“にこにこベリー”という新品種のイチゴ。

その特徴はもうひとつ。ほかの品種と比べてきれいな円すいの形に育つものが多く、スイーツに使えば“映え”ること間違いなし。

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宮城県・村井嘉浩知事「ほら真っ赤、濃いでしょ」「こんな記者会見初めて、食べながらの記者会見」

そんなイチゴを、知事も自ら異例のPR。

宮城県・村井嘉浩知事「みんなに笑顔を届けたいという思いから、“にこにこベリー”という名前。奇跡の一粒でございます」

“宮城県に笑顔を”、そんな思いが込められている。

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そもそも、この新品種の開発が始まったのは2005年のこと。

JAみやぎ亘理いちご部会・小野勇悦副部会長「宮城県の『もういっこ』と、栃木県産の『とちおとめ』をかけ合わせた品種」

2つの品種をかけ合わせて、それぞれの良いところを引き出そうとしたものの、試食してはやり直しの繰り返し。その数は3万粒にものぼったが、やがてその努力は実を結んだ。

JAみやぎ亘理いちご部会・小野勇悦副部会長「(収穫量は)この辺の平均の『とちおとめ』よりは多く取れます。育てやすいですね。手をかけた分、かえってくる感じ」

収穫できる量は、とちおとめに比べると3割ほど多く取れるなど、効率よく栽培できる品種の開発に成功。

JAみやぎ亘理いちご部会・小野勇悦副部会長「持った感じかたい。お客さんに届くときに皮がむけない、きれいな形で届くように」
今後、首都圏での販売も視野に入れているという。

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こうした優れものの新品種は、宮城県だけでなく、今、東北で続々と誕生、注目されている。

山形県で開発されたのは、500円玉よりも大きいサクランボだが、このボリューム感にしてあの「佐藤錦」並みの糖度があり、日持ちも良いとのこと。

県は現在、名前を公募しており、今年3月に名前を発表。2023年頃から本格的に売り出す予定としている。

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県を挙げ新品種が開発される一方で、全国一のリンゴの産地、青森県では、農家が個人で14年かけ開発に成功した新品種がある。

りんご新品種育成研究会・桜庭保夫会長「これが“明秋”です。(Q.できたときの気持ちは?)宝くじあたったような思いですよ。たまたま遺伝子がよかったんじゃないですかね」

収穫時期である秋が明るくなるように“明秋”と名付けたというこのリンゴ。おなじみの品種「ふじ」と比べてみると、一回り大きく赤みが鮮やかなことがわかる。

さらに、この新品種には、ほかにもメリットがある。

りんご新品種育成研究会・桜庭保夫会長「(リンゴに)袋をかけなくてもいいし『ふじ』よりも15日くらい早く収穫してもおいしいリンゴになりました。非常にハイブリッドではあります」

袋をかけなくても簡単に着色するため、農家の負担が軽減されるという。

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町ではこの新品種に期待する声もあがっている。

板柳町役場・産業振興課 外川叶主事「板柳町でも高齢化と若い担い手不足が深刻化してきている現状です。高齢者でも簡単に作業ができる、そしていっぱい取れるリンゴであると。一番必要なのは作業の省力化なのかなというふうに思っています」

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続々と開発が進む果物の新品種。農業の未来を明るく照らす“救世主”として、今後ますます注目されそうだ。