×

SPA!問題“寛容の矛盾”どう解決するか

2019年1月28日 16:10
SPA!問題“寛容の矛盾”どう解決するか

世の中で議論を呼んでいる話題について、ゲストに意見を聞く「opinions」。今回の話題は「週刊SPA!、特集記事をめぐり女子大学生と編集部が話し合い」。「BuzzFeed Japan」創刊編集長の古田大輔氏に聞いた。

雑誌「週刊SPA!」は先月、誌面の中で「ヤレる女子大学生ランキング」という特集記事の中で、女子大学生を性的にランク付けする記事や表を掲載した。ランキングでは首都圏にある5つの大学の実名があり、実名を掲載された大学は抗議文を発表した。

「週刊SPA!」を発行する扶桑社は、おわびのコメントを発表。今月14日には、謝罪などを求めてネット上で署名活動を行った女子大学生が扶桑社を訪れ、週刊SPA!編集部と話し合いを行った。

ネット上では、「あまりにひどい記事」「成人男性誌はそういう表現だらけだよね」という声の一方で、「逆に男をモノとしか見ていない女性誌もあるのでは」という声も聞かれた。


――フリップをお願いします。

『寛容のパラドクス』と書きました。私はこれについてよく考えるんですが、「ヤレる女子大学生ランキング」というのは、全然、事実やデータに基づいている話でもないし、女性を性の対象、モノとして扱うような考え方であるとか、実際にそれで名前を挙げられた大学への名誉の問題とか、「良くない」ということに関しては、多くの人が同意すると思います。だからこそ編集部も取り下げをするわけですね。

ただここで議論としてちゃんと考えないといけないのは、何から何までがダメなのか、それはなぜなのかということをきっちり考えないといけないんですね。その時に問題になるのが、この『寛容のパラドクス』という言葉です。哲学的な議論で、もう何十年もされていることなんですが、「人は他者に対して寛容であるべきだ」と、そうじゃないと社会は成立しません。でも誰かを傷つけるような不寛容な意見に対してまで、寛容でいると、その不寛容さが社会を傷つけてしまうと。だから不寛容な意見に対しては、時に不寛容でなければいけないと。

じゃあ何をいけないというのかという部分をちゃんと考えないと、何でも不寛容でいると、結局、社会はどんどん不寛容になっていく、その矛盾(パラドクス)をどう解くのかというのは、本当に社会としてしっかり考えていかないといけないと思うんです。そういう意味で、今回、希望といえるひとつは、編集部と抗議をした大学生たちが対話をしたということだと思います。そういうことを本当に続けていかないといけないと思います。


――創刊編集長として、不寛容に対しての訴えというのはどういう手法をとっているのでしょうか。気をつけている点などはありますか。

すごく難しいんです。女性を性的な対象としてモノ化するような言論というのは良くない、というのはその通りじゃないですか。では別の事例はどうなのかと、ひとつひとつ個別、具体的に議論をしていくと、その境目って非常に難しいんです。

例えば、女性をランク付けするようなものって世の中に山ほどあるわけですよね。じゃあ、ランク付けするものは全部ダメなのか、逆に男性をランク付けするものはどうなのかとか、具体的に検討をはじめると実はその境目はものすごく難しくなる、だからこそ議論しないといけないと思うんですよね。議論しないと同じような間違いを何度も繰り返してしまうので、大変な話ですが、何度も対話することが重要だと思います。


■古田大輔氏プロフィル
朝日新聞で社会部記者、アジア総局、シンガポール支局長などを歴任。その後、朝日新聞デジタルやWebメディア「withnews」の編集に携わる。そして、2015年、「BuzzFeed Japan」の創刊編集長に就任。「BuzzFeed Japan」は、柔らかい話題から硬派なニュースまで様々な情報を発信するデジタルメディア。最先端のテクノロジーを用いて記事や動画を作り、ウェブサイトやアプリだけでなく、あらゆるソーシャルメディアを通じてユーザーに届けている。

【the SOCIAL opinionsより】