×

“つらい気持ち”伝え合えれば職場は変わる

2018年12月4日 15:36
“つらい気持ち”伝え合えれば職場は変わる

世の中で議論を呼んでいる話題について、意見を聞く「opinions」。今回の話題は「ダイバーシティ、過半数の企業取り組まず」。WEBメディア「soar」の編集長・工藤瑞穂さんに聞いた。

ダイバーシティの推進とは、多様性のある人材の採用や働き方、考え方の醸成に取り組むこと。ある人材総合サービスが、企業の経営者や人事担当者に「ダイバーシティ推進の取り組みを実施しているか」と聞いたところ、「実施していない」企業が59%にのぼった。

推進するにあたっての悩みとして、「“ダイバーシティ”という言葉が一般化しないと」「LGBTについてインフラ面で対応が困難」「経営陣が高齢で固定観念が強い」などの意見があった。

――工藤さんのご意見をフリップでお願いします。

『平気なふりをして我慢している』というキーワードを書きました。ダイバーシティ推進に取り組んでいる企業は増えていて、LGBTや障害者の雇用に取り組んでいる方々も多いと思うんですが、決して特別な人だけが困難があるわけではなくて、私は、普通に見えている人にも困難があると思っています。

例えば「ちょっと生きづらい」とか「自分らしくいられない」、あるいは「今日はちょっと体調が悪いな」と思いながら会社に来ていて、でも平気なふりをして、我慢をしている人ってたくさんいるんじゃないかなと。

――プライベートな部分だから会社では出しにくいということもありますね。

そうですね。私自身も会社で働いている時はそうでした。なので、障害者やLGBTの方というだけではなくて、誰でも自分の弱さであったり、本当の思いみたいなものが共有しあえれば、誰にとっても働きやすい職場ができるんじゃないかなと思っています。

――ただこのダイバーシティの取り組み、半数がまだ実施していないと。本当にみんなが悩んでいる中でどう変えていけばいいのでしょう。

研修や制度をつくるとかも大事だとは思いますが、足元からできることというのを提案したいなと思っています。例えば私たちの組織だと、なかなか「つらい」というのを言い出すのは大変だと思うので、毎朝、自分の「気分」や「体調」を自分で把握して、言葉にして、みんなで伝え合うということをしています。それを積み重ねていくと、つらい時に「つらい」と言えるようになって、会社の空気感を変えていけるのではと思っています。研修や制度から入らなくても、そういう足元からの積み重ねからなら、どの職場でもチャレンジできるんじゃないかと思います。

――ただ、大企業ならわかるんですが、中小企業などギリギリでやっている会社もあるし、さらにお母さんなどは苦労して子どもの世話をしている人もいるかと思いますが、そういう人も入ってくるんでしょうね。

そうですね。大企業だといろんなものを受け止めるリソースがあると思うんですが、中小企業だと特に大変かなとは思います。私たちのチームもすごく小さな組織なので、どこまでやるかの線引きは必要かなと思っています。受け止め切れるものはどこまでなのかを決めていくのがいいかと思います。


■工藤瑞穂さんプロフィル
WEBメディア「soar」の編集長。「マイノリティー」と呼ばれる人の可能性を伝えるメディアを運営している。きっかけとなったのは、東日本大震災。当時、仙台の日本赤十字社で働いていた工藤さんは、趣味のダンスを生かして、クラブでのチャリティーイベントや支援物資を届ける活動を始める。そこで、「自分ができることを続ければ、社会を変えていける」と実感し、2014年に上京。次第に、LGBTや障害がある人など、困難を抱える人をサポートしたいという思いが募った。そして、立ち上げたのが、ウェブメディア「soar」。社会的マイノリティーと呼ばれる人が持つ能性を広げる活動を紹介。全ての人が、自分の持つ可能性を発揮して生きる未来を作るために奮闘している。


【the SOCIAL opinionsより】