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りんご王国の青森県 新技術「高密植栽培」

2018年11月4日 21:05
りんご王国の青森県 新技術「高密植栽培」

日本一のりんごの産地、青森県から新しい栽培方法、「高密植栽培」を紹介する。作業がしやすく収量も多くとれるため、大規模化につながる栽培方法として注目されている。

青森市浪岡の田中一幸さん(56)の園地。木の間隔は60センチから1メートル。通常のわい化栽培の半分以下で、10アールあたり300本と通常の2.4倍の木が密集している。これが高密植栽培。イタリアやアメリカで主流になってきている栽培方法で、この日は県りんご協会も取材に訪れていた。

田中さん「勉強して、平成23年からこれに対して、高密植に対して、興味を持ってやり始めたと」

特徴は、低い木が整然と密集しているため、作業がしやすく機械も入りやすいこと。そして、10アールあたりの収量が6トン前後と通常のわい化より2割ほど多いこと。また、通常より2~3年早く定植5年目で本格的に収穫できるのも大きな利点。

田中さん「MAX6トンから7トンくらいの収量があがります。5年目でそれだけあがるというのは、今までの栽培ではありえませんので」「下からはしご使わないで、5割以上の仕事ができるのが、ひじょうに大きなメリットかなと思います」

りんご作りは、良い花芽が残るように行う冬場のせん定が欠かせないが、高密植栽培では必要ない。その代わり夏場に枝が下を向くようにひもや針金で固定し、木の勢いを抑える。これにより、枝が下がってより低い場所に実がなる。その結果、雪の重みや台風などの暴風にも強いことがわかってきた。

田中さん「ことし3度ほど(台風で)風が吹きましたが、落果はほぼない感じです。(通常の)丸葉で結構10アールで4箱くらい、ここは1籠、20個から30個くらいでした。ひじょうに風に対しても強い。雪にも強いので、自然災害にはひじょうに強い仕立て方です」

田中さんの個人的な研究には、県や農家も注目していて視察会も開かれている。

県りんご果樹課・舘田朋彦課長「10アールあたりの収量も良く、それから品質も良いりんごがとれる」「県りんご研究所でも(高密植)試験を開始しているので、そのデータをもとに良い成果がでれば広めていきたい。普及していきたいと考えています」

一方、課題としてあげられているのは根が浅いため、夏場の干ばつに弱いこと。そして、苗木の数が多く必要で初期投資がかかることなど。ただ、農家の高齢化や担い手不足という根本的な課題を補い、大規模化につなげる取り組みとして期待が高まっている。

田中一幸さん「これからこの栽培が、ほぼ機械化されていくものと思います。AIとかIOTとかいろんな技術がありますけれど、それを活用できる農業になると思う。この状況で大規模経営もできますので、将来性のある栽培方法だと思います」

りんご王国の新しい技術として、高密植栽培が定着していくのか、田中さんの研究成果に注目されている。