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「助けて」虐待の声、聞こえない理由とは?

2018年10月31日 15:35
「助けて」虐待の声、聞こえない理由とは?

世の中で議論を呼んでいる話題について、意見を聞く「opinions」。今回の話題は「11月は児童虐待防止、推進月間」。子どもたちの孤立問題に取り組む児童精神科医の小澤いぶきさんに聞いた。

昨年度の東京都の児童相談所における虐待相談の対応件数は、1万3707件で、過去最多だった。児童虐待を防止するため、子どもや保護者からのLINEによる相談を東京都は、全国で初めて11月1日から14日まで行う。

「育児が大変、疲れた」「イライラして、子どもをたたいてしまう」といった保護者からの相談や「親からいつもたたかれる」「ご飯を食べさせてもらえない」といった子どもからの相談を、受け付けるという。


――小澤さん、こうした現状をどう思われますか。フリップをお願いします。

『隣人への想像力』と書きました。マンションに住んでいると、隣の人の顔もわからないということもありますし、「隣人」とは物理的に隣に住んでいるだけではなくて、例えば、インターネット上にいる人とか、電車ですれ違う人…そういった人たちも私たちが気づかないうちに出会っている人も実は「隣人」ではないのかと思います。


――そういった方への「想像力」とはどういった意味でしょう。

このLINEを使うというのも、例えば直接話して相談するなどはしんどいけど、ネット上だったら…という人の声を拾うツールになると思います。

あと、例えば家賃を滞納しているというのはひとつの“しんどい”サインじゃないかなと思います。そのサインは不動産屋さんなどが拾えていたりするので、そう考えると不動産屋さんは、そういった人たちの隣にいる人かもしれません。子どもが毎日コンビニに何か買いに来ているというのを知っていれば、コンビニの人は子どもたちの隣にいる人かもしれません。

そう考えると、現代は、誰もが誰もの隣人なんじゃないかと思います。その時に、これは自分に関係ないとか、排除するのではなく、その人に対して、どんなまなざしが必要なのか、どんな役割があったらお互いより良く生きられるのか、という想像力をいかに持つかが大事なことではないかと思います。


――児童虐待は社会全体で解決すべき問題というのもありますが、そういった想像力を持つことは、子どもだけではなく、社会全体に“優しくなる”というところにもつながりそうですよね。

本当にそう思います。寛容さが人との関係の中に表れてきて、寛容な社会になっていくのではないかと思います。結局、虐待が起きそうな時に「助けて」と言えないことは、その家族の周りの隣人との関係が絶たれていることだと思うんです。そこをもう1回どうつなげるかということを考えていけたらと思います。


■小澤いぶきさんプロフィル
子どもたちの孤立問題に取り組む。児童精神科医として病院や行政で臨床に関わる中で、多くの子どもが虐待や貧困、いじめなどで孤立し、尊厳が奪われていく現実に直面。子どもの孤立の解消を通じ、誰にとっても寛容な社会の実現を目指している。


【the SOCIAL opinionsより】