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EU離脱で英国名産のウナギに“深刻事態”

2018年10月20日 19:03

来年3月に迫った、イギリスのEU(=ヨーロッパ連合)からの離脱。その離脱をめぐる交渉は、期限とされた今週のEU首脳会議でも進展はなかった。「合意なき離脱」が現実味を帯びる中、イギリス名産の「ウナギ」に深刻な事態が迫っていた。

北アイルランドにあるネイ湖。イギリス最大のこの湖は、ヨーロッパ最大級の天然ウナギの漁場として知られている。ここでは漁獲量の2割をイギリス国内に、残りの8割をEU域内へ輸出している。しかし、取引の大部分を占めるEUへの輸出ができなくなるかもしれないという。理由は、残り半年を切ったイギリスのEUからの離脱だ。

ネイ湖漁師協同組合 パトリック・クローズさん「最悪の場合、ヨーロッパへの輸出が許されず、EU以外の他の国の市場を探さなければなりません」

ネイ湖でとれるのは「ヨーロッパウナギ」という種類。急激に数が減ったことから国際的に保護され、EUでは加盟国内のみでの取引が認められている。つまり、EU加盟国以外への輸出や、EU加盟国以外からの輸入ができない。EU離脱によって、ネイ湖のウナギはこの枠組みから外れ、何の取り決めもなされない「合意なき離脱」が起きると、ネイ湖のウナギがイギリスの外に一切出荷できなくなる可能性がある。

ネイ湖漁師協同組合 パトリック・クローズさん「オランダやドイツの取引先と50年以上かけて良い関係を築いた。EU離脱後に、私たちがどこに魚を売ることができるのか。時間がなくなってきています」

一方、主な輸出先であるオランダで、ネイ湖産ウナギを仕入れている加工会社を訪ねた。そこで作られていたのはウナギのくん製。ウナギをつるし、煙でいぶす。日本では見慣れない光景だが、オランダでは一般的だ。くん製にしても柔らかさが保たれるのが特徴で、人気の商品だという。

鮮魚店の客「1週間に1度は買うわ。みんなウナギのくん製は好きよ」

鮮魚店の店員「毎週仕入れています。こんなにおいしいウナギが楽しめなくなるとしたら、本当に残念です」

名産品の今後を大きく左右する離脱交渉の行方。しかし、ヤマ場とされていた今週のEU首脳会議でも、イギリスのメイ首相からは進展につながる新たな案は出されず、「合意なしの離脱」はさらに現実味を増している。

交渉期限がさらに先延ばしとなる中、来年3月に迫る離脱の時。イギリス、そしてEUはその時をどのような形で迎えるのか、先行きは不透明だ。