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東北で“ゾウの引っ越し”次々…目的は?

2018年10月17日 21:25
東北で“ゾウの引っ越し”次々…目的は?

いま、“動物園同士でメスのゾウを交換し合う”という新しい試みが、東北で始まっている。全国でも初めての取り組みだという。その目的とは?

◆仙台のゾウ、秋田へ

15日、宮城県・仙台市の八木山動物公園の獣舎には、大きなコンテナが横付けされていた。中にいたのはメスのアフリカゾウ「リリー」だ。29歳で、体重は2.8トン、体高は2.4メートルある。

仙台の動物園に別れを告げ、秋田へと引っ越しすることになったリリー。28年間、その世話をしてきたのが、飼育員の南條幸夫さんだ。

八木山動物公園 南條幸夫さん「自分の子どもを他に出す感じですね。(日本に来た翌年に)ものすごい下痢を起こして、まだ日本に対応していないというのと、八木山の寒さですね。それで苦労した記憶があります」

いまから28年前の1990年8月17日、リリーが仙台に来て8日目の映像には、まだ1歳のリリーが映っている。飼育員に鼻を伸ばし、愛くるしい姿を見せていた。隣にいるのは、南アフリカから一緒にやって来た同い年のオスの「ベン」。

“大きな体の割にはけっこうな慎重派”のベン。一方のリリーは、“小柄でも好奇心旺盛で器用”。ずっと一緒にいたが、なかなか赤ちゃんには恵まれなかった。

八木山動物公園 南條幸夫さん「ベンとは(アフリカから)一緒に来ていて、きょうだい感覚なんですね。それで男女の関係にはならない」

◆実は秋田の動物園でも“同じ悩み”

こうした中、同じ悩みを抱えていたのが秋田市の大森山動物園だった。こちらにいるのは、メスの「花子」。妊娠適齢期である29歳だ。同い年のオスの「だいすけ」と一緒に飼育されていたが、子どもはいない。

そこで考え出されたのが、動物園同士で“メスのゾウを交換し合って繁殖につなげる”という、全国でも初めての取り組みだった。岩手・盛岡市を含む東北地方の3つの動物園が共同で行う繁殖プロジェクト。まず先月下旬、秋田にいた花子が仙台の動物園へ。今月15日にはリリーが仙台から秋田へ向かった。

絶滅危惧種に指定されているアフリカゾウは、ワシントン条約によって輸入が厳しく制限されている。こうした中、国内での飼育はわずか30頭あまりにまで減少。そのため、“このままでは日本の動物園からアフリカゾウがいなくなる可能性”が指摘されている。

◆リリーとだいすけの相性は…?

15日に、28年間を過ごした仙台をあとにしたリリー。4時間かけて無事に秋田の動物園に到着した。リリーは早速、寝室に入り、元気な様子を見せていた。

リリーの隣にいるのが大森山動物園のだいすけ。リリーがだいすけの方に鼻を伸ばすなど、お互いに興味津々だ。動物園では、おり越しにだいすけとの相性をみながら焦らず慎重にリリーを飼育していく考え。

大森山動物園 三浦匡哉さん「だいすけと早く仲良くなってほしい。初対面なんですけど、割とお互いに関心を持って鼻でにおいをかいでいるんですかね。コンタクトはありましたので、幸先が良いのかなとは思っています」

前例のない繁殖プロジェクト。新たな環境での成果が期待されている。