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体験ツアー、2拠点…広がる「地方移住」

2018年9月24日 19:45
体験ツアー、2拠点…広がる「地方移住」

自然豊かな暮らしを求めて、地方に移り住む動きが広がっている。ただ、移住先になじめないケースもあり、いま広がっているのが、体験型の「お試し移住」。この週末、「お試し移住ツアー」に密着、そこで見えた新たなカタチとは。

◆移住希望の町で“お試し”、働く場も

島根県海士町のある住宅で、夕食の準備が行われていた。慣れた手つきでイカスミパスタなどを完成させる男性は、実は東京から海士町への移住を考えているという、料理人の吉田智裕さん(34)。移住希望者などが暮らすシェアハウスで、料理人として働いている。

吉田智裕さん(34)「一番最初にいた時は、寒シマメという“するめいか”の商品を作ったり」

移住を希望するこの町で、海産物を扱う仕事や料理人としての仕事をしている吉田さん。一体、どういうことなのだろうか?

実は、海士町では観光協会が、移住を希望する人に対し、まずは、試験的に住んでもらうと同時に、地域に根ざした働く場所を紹介している。

吉田智裕さん(34)「紹介いただかなければ、右も左もわからないですし、生活基盤も築きにくかっただろうと思いますし、いろんな人と出会えたのも、ワーキングホリデーという制度があったおかげ」

人口減少が進む地方では、多くの移住者を受け入れたいと、自治体や企業などによる活発な移住促進への取り組みが進められている。

◆「移住体験ツアー」で“先輩”とも交流

田んぼの中を走っているピンクのバスは、鳥取県湯梨浜町にある直売所に立ち寄る。

佐相泰介さん(36)「ここのは大きいよね」

佐相亜友美さん(30)「大きいね」

大阪から来たという佐相さん夫妻は、なにやら真剣な表情で品定めをしている。訪れた農園では、ハーブを使ったリース作り。

実はこれ、湯梨浜町が、お隣・倉吉市と初めて共同で行った移住体験ツアー『鳥取県の真ん中移住体験ツアー(2泊3日 約6000円)』で、移住を希望している人たちが2泊3日で地域のスーパーや温泉などを巡るもの。

佐相さん夫妻も、来年の春には地方に移住したいと、ツアーに参加した。

佐相亜友美さん(30)「満員電車とか疲れるなって感じで、実家帰った時に自然に癒やされるので、自然いっぱいの所で住めたらなって」

佐相泰介さん(36)「実際、住む所もそうですし、医療や学校も見たいなって(ツアーに参加した)」

ツアーでは、豊かな景観を眺めながらのヨガ体験も。そして夕食は、既にこの地に移住した“先輩”たちとの交流の場。佐相さんや参加者から質問が相次ぐ。

15年前に移住した人「帰省してくるのと、いざ自分で住むのは違うなって」

佐相泰介さん(36)「どこが大きく違うんですか?」

15年前に移住した人「どっしりとそこに近所付き合いも全部私がしないといけないし、ありとあらゆる行事に顔を出す努力も必要かなと」

都会では希薄になりがちな近所付き合いなどに、少しばかりの不安も…。

佐相亜友美さん(30)「(雪が降った時は)近所に助けてと言って、地域の人と助け合いながらは、都会にはない良いところかなと思うので」

佐相泰介さん(36)「田舎の一軒家といったらいいかわからないけど、そういうことも知っていた方が良いのかなと」

◆“2拠点移住”スタイルで週末利用

都会から地方へ。移住はしたいけれど急な生活の変化はちょっと、という人には、こちら。

千葉県南房総市では、廃校となった小学校の校舎の前にいくつもの建物があった。黒板が残る教室には、シックさを基調としたソファとベッドが。実はここ、ある企業が無印良品と共同で、校舎とその敷地を利用し、新しい住居モデルを提案しているという。

シラハマ校舎 多田朋和さん「平日、かなりストレスをためられて暮らしている中で、週末、ここは自然も豊かな場所で、ストレスフリーの場所で、豊かに暮らしたいということで週末利用されている方が多い。(自宅とこの家と)2拠点できる住まい方を、利用者に使っていただければ」

いま、別荘ほどはいかなくとも、都心の自宅と週末の家と、手軽に2つの拠点を持つ人たちが増えているという。

様々な形で提供される地方移住への取り組み。今後もニーズに合わせ、新たな進展を迎えそうだ。