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プーチン氏「平和条約」提案 北方領土の今

2018年9月15日 21:15

ロシアのプーチン大統領が安倍首相に対して、平和条約を年内に締結しようと提案した。北方領土問題を棚上げする意図があるとみられるが、その北方領土では今、何が起きているのだろうか。

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北方領土・国後島には、およそ8000人のロシア人が住んでいる。

その国後島で、今、人気なのが温泉。この日は、子どもを連れた住民らが集まっていた。火山地帯にある北方領土では、各地に温泉が湧いている。この温泉は、地元のロシア人が管理・運営しているという。

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一方、携帯電話の販売店には、韓国や中国製のスマートフォンが並んでいる。住民によると、この秋には中国企業の出資によりインターネット環境がさらに整備されるという。

そして、工事現場には外国人労働者の姿が・・・。

「(Q.どこから来た?)(ウズベキスタンの)タシケントから。(Q.給料はいいか?)悪くない」

外国の資本や労働力を取り込み、ロシア主導の開発はますます進む一方で、日本の存在感は薄まっている。

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こうした状況に歯止めをかけ、領土問題の進展を目指して、打ち出したのが、北方領土での共同経済活動だった。

安倍首相「(共同経済活動の)ロードマップを承認しました。(北方)四島の未来像を共に描く作業の道筋がはっきりと見えてきました」

10日に行われたプーチン大統領との首脳会談では、5つの事業の実現に向けた作業の進め方で一致した。

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国後島で、その共同経済活動の実現を待ちわびている人がいる。

建築資材業・グレビョンキンさん「先日、(地元政府から)温室を作る提案があった。場所は十分にある」

日本と協力して、イチゴの温室栽培を行いたいと考えている。そのための土地も用意した。

グレビョンキンさん「あそこから私たちの土地だ。貯水池があって、ちょうど温室2棟に十分だ」

グレビョンキンさんは「日本人と協力する準備はできている」と期待を寄せていた。

実は、島で販売される野菜などは、船での輸送に頼るため、供給が安定せず割高なのだ。

島民「共同経済活動は支持している。(国後島で野菜を)栽培してほしい。船で運ばれてくるより安くなるから」

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ただ、難しい課題も残っている。共同経済活動をどのような制度にのっとって行うのか、肝心の部分が決まっていない。

ロシア・プーチン大統領「平和条約を締結しよう。今ではなく、今年の年末までに、一切の前提条件なしに」

プーチン大統領の突然の発言の裏には、思うように進まない交渉に対するある種のいら立ちと、日本に決断を促したい思惑が垣間見える。

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70年以上続くロシアの実効支配。島民の世代交代が進み、「ロシア流」が根付く中、時間の経過は交渉をさらに難しくさせることになる。