全社員に出社義務なし テレワ極める会社2
シックス・アパート株式会社・代表取締役の古賀早氏に聞く「飛躍のアルゴリズム」。テレワークを導入しているシックス・アパートでは、社員はどのようにコミュニケーションを取っているのだろうか。さらにテレワーク導入時の“秘けつ”を語ってくれた。
■出社せずにどうやってコミュニケーションを?
――コストが削減できたということで、様々なメリットがあると思うんですけれども、その他に何かメリットはありますか?
まず、みなさん出社されませんので、定期代の支給をやめました。会社に来た日数分だけ、交通費をお渡しするようにしました。
こういうソフトウエア開発会社ですと、給与以外のコストというのは、やはり交通費や家賃などが多いんです。それが削減できたのは非常に大きいところです。
――(地方在住の優秀な人材を雇用できるなど)採用にもメリットがあって、コストもかからなくなったということですね。ただ、コミュニケーションは大丈夫なのかと、ちょっと心配になります。
コミュニケーションについては、週1、月1でチームごとにみなさん会われています。後ほどちょっと出てきますが、“EBO(従業員買収)”というかたちで大きな企業グループから独立をしていますので、4半期に1回、全社員で集まります。つまり、それは株主総会なんですけども、そういった機会も設けていますので、基本的には顔を合わせています。
それ以外に、チャットシステムやオンラインの会議システムなどを使って、コミュニケーションを取っていただいています。
対面する機会も週1、月1でありますので、それをベースにクラウドシステムなどのツールを使って、コミュニケーションを取っていただく。この2年間、全く支障なく仕事は回っているかなと思います。
■テレワーク導入の秘けつ「サボりは考えない」
――テレワークをすすめようという企業も増えてきましたが、テレワークを導入するときの秘けつは何かありますか?
我々が取った方式を今おすすめしているんですが、“引き算”で考えていただきたいなと。多くの企業さまに、「どうやって導入するのか、どこから始めればいいのか」と聞かれるんですけども、引き算するのは“ルール”ですね。
テレワークを導入しようとすると、週何回までで、その回数に対して状況に応じた様々な申請をするとか、やっぱりルールを足して作ってしまうんですね。我々の場合は、その「来なくてはいけない」というルールをなくしただけのところから始めました。
ルールをどんどん足していくと、いつ会社に行くか行かないかが分からなくなってしまって、その制度そのものが使われなくなってしまいます。ぜひ引き算で考えていただくとよろしいかなと思っています。
――そういう点でいうと、やっぱり信頼関係がとても大事になってくると思うのですが、勤務管理はどうされていますか?
まず、サボるんじゃないかという不安があると思います。我々のようなIT企業ではなくても、今ほとんどの企業の社員の方は、たぶん大抵の方がパソコンに向かって何か作業をされているんじゃないかなと思うんですね。ただ、目の前にいてもサボっているかサボっていないか分からないはずなんです。つまり、目の前にいると安心ですか?という話です。
我々の会社はブログのソフトウエアの会社でしたので、社員の画面に1日中、芸人さんのブログやSNSなどが開かれていても、働いているのか遊んでいるのか分からなかったんですね。そういう意味では疑うだけムダなので、サボりに関しては全く考えていませんでした。
もし、ご自宅に居るんであれば、ワールドカップの再放送を見てもいいですし、甲子園に地元の学校が出場するなら、それを応援していただいても構いません。その後、集中して仕事をしていただければいいかなと思っています。
――技術の部分でも世の中が変わったというのはありますよね。
そういったクラウドシステムが非常に増え、機能が上がってきているので、誰が今いま何をしているかということがとても分かりやすくなっています。
仕事が透明化しているのが非常に大きく、誰がこの部分を作ったか、品質保証において誰がこの不具合を見つけたか、そしていま誰がそれを直しているのか、直したものを誰が確認したか…という記録がずっと時系列で取られています。
サボる、サボらないというよりも、仕事自体が透明化しているのもテレワークでの勤務管理を支えている1つの要因かなと思います。
――会社にいなくても分かることが増えて、お互いの信頼感もじゅうぶん持てるということなんですね。