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「休みも成果に」 大学運動部に改革が

2018年7月27日 18:21
「休みも成果に」 大学運動部に改革が

日大アメフト部の悪質タックル問題が注目される中、大学スポーツのあり方が問われている。その改革に向けてスポーツ庁は、24日に新たな会議をスタートさせた。大学スポーツは今、どう変わろうとしているのか。

猛暑の中、練習する筑波大学硬式野球部の選手たち。熱中症を防ぐため“20分に1回全体で休憩”し、“正午~午後3時は練習しない”など、この4月から方針が大きく変わった。筑波大学硬式野球部の福永大貴主将はこう話す。

「“休むのがダメ”みたいなそういう習慣とか文化だったのが、休むことも成果につながるんだということでみんな認識して、そういう雰囲気的なことも変わりました」

変化のわけは、筑波大学が今年4月に、運動部の活動を一元的に支援する“アスレチックデパートメント”という新しい部署を作ったことだ。練習の前に周囲の安全確認を行うなど、アスレチックデパートメントの指導をうけ、安全意識が高まったという。

冷たい水で体を冷やし、疲れが残らないようにする冷却専用のプール。アメリカでは当たり前のこういった設備も、アスレチックデパートメントが推奨し、部費ではなく大学の費用で作られた。

このように、これまで部に任せきりだった安全管理などを、大学が率先して支援する体制に変えたのだ。筑波大学アスレチックデパートメントの副アスレチックディレクター・山田晋三さんはこう説明する。

「課外活動であった学校の部活動を正式な教育活動へ組み込む。大学が主体となって皆さんの活動をマネジメントします」

部活や学業の充実度などをはかるアンケートも行い、現場の声を吸い上げている。

こうした大学の運動部改革を広く進めようと、スポーツ庁は24日、全国の大学や競技団体とともに会議を開いた。

日本の大学の運動部は授業ではなく“課外活動”の扱いで、運営は監督などに任されている。人事や練習方針などは、監督やOBだけで一方的に決めることもあるため、日大アメフト部の悪質タックル問題のように責任の所在があいまいになりがちだ。

そこで、アメリカのNCAA(=全米大学体育協会)を参考にした組織を日本でも立ち上げ、共通のルールを作り安全を確保し、指導者にも研修を行うことで部の運営をより適切にしようというのだ。

実は、アメフト界では日大問題で注目される前から、改革の動きが始まっている。一部の大学や企業のアメフトチームの監督らが2017年5月に団体を立ち上げ、安全な練習方法などを共有している。

取材したこの日は、選手の脳震盪などの最新の医学情報を盛り込んだアメリカのガイドラインを日本語に訳し、議論した。

法政大学アメフト部・安田秀一前総監督「自分のチームだけが良いというわけではない。最終的にはNCAAと同じルールを決めていこうみたいな」

東京大学アメフト部・森清之ヘッドコーチ「頭がちょっと痛いとかを言えないとか、休むことが、誰が何を言おうが仕方ないというところとか。たぶんそこが最終的に一番ネックになると思う」

今後、より多くのアメフトチームのみならず、ほかの競技にも取り組みを広げたいとしている。

大学スポーツの改革について、スポーツ庁の鈴木長官は――

「競技横断別、大学を超えての組織がこれまでなかったのは問題だと思っています。まずは安全安心の確保、それから学業の充実。これをはかっていきたい」

日本でもようやく本格的に始まった大学スポーツの改革。“日本版NCAA”は、2019年2月、正式に発足する予定だ。


【2018年7月24日 news every.放送】