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トルコ“独裁化”懸念「自由取り戻したい」

2018年7月13日 14:34
トルコ“独裁化”懸念「自由取り戻したい」

中東・トルコで、6月の選挙に勝利したエルドアン大統領が再び大統領に就任した。独裁化が懸念される中、影響は人々の心にまで広がっている。


■強いリーダーか独裁者か

7月9日、トルコでエルドアン大統領の就任式が行われた。エルドアン大統領は壇上でこう述べた。

「“新たな統治システム”のもとで、建国95年の我が共和国をより強くすることを国民に約束する」

“新たな統治システム”とは、議院内閣制から大統領制への移行のことだ。首相ポストも廃止され、エルドアン大統領は閣僚の任免や大統領令の発令など、強大な権限を握る初めての大統領になった。支持者は「エルドアン大統領より強いリーダーなんてトルコにはいない」と話す。

しかし、これにより大統領の独裁化が進むと懸念が広がっている。独裁化の象徴とみられているのが、就任式が行われた大統領の住まい。地元メディアによると、部屋の数は実に1100以上。豪華な内装から“宮殿”と揶揄されている。

対立する勢力の粛清など、強権的との指摘がつきまとうエルドアン大統領。2016年のクーデター未遂以降、こうした弾圧を強めてきた。クーデター未遂の首謀者と関わりがあるとして、学校も閉鎖。その数はトルコ全土で1000校を超えるという。


■政府を恐れ“印刷拒否”

こうした雰囲気は人々の心理にも影響を与えている。風刺雑誌の編集部で働くアルトゥーさんは大統領選挙を前に、雑誌にある写真を載せた。それは、候補者の顔のパーツなどを組み合わせたもの。しかし、当初は別のデザインだったという。

「こちらにはエルドアン大統領の口だけがあるが、当初は大統領の目・鼻・唇を入れていた。もともとの表紙はこれだった」

結局、このデザインは不採用になった。雑誌を印刷する会社が印刷を拒否したのだ。理由は説明されなかったが、彼は「政府ににらまれるのを恐れたのだろう」と話す。そんな状況にアルトゥーさんは――

「ここまで来たかと、皆これほど怖がっているのかと思った。(取り戻したいものは)自由な気持ち。絶対に」


■通貨暴落で景気悪化

一方で、別の問題も起きている。最大都市・イスタンブールの新興住宅地では、マンション建設の中断や遅延が起きていた。原因は、景気の悪化。特に、トルコの通貨・リラの暴落だ。都市計画に関わったクンバラジュバシュさんはこう語る。

「(リラの暴落で)輸入資材のコストが増加した。それに(景気が悪くて)誰もマンションを借りないし、買わない」

国民の萎縮ムードと、景気の悪化。強大な権限を握る強い大統領が、トルコにどんな結果をもたらすのか注目されている。