ロシアの“飛び地”、華やかなW杯の陰で…
サッカー・FIFAワールドカップで熱戦が続くロシア。試合は11の都市で行われているが、1か所だけロシア本土から離れた特殊な場所がある。どんなところなのだろうか。
■ロシアの“飛び地”が会場に
モスクワから飛行機で約2時間。NNN取材団が降り立ったのは「カリーニングラード」。ロシア本土とは地続きではなく、リトアニアとポーランドを挟んだロシアの“飛び地”だ。
取材に訪れた日は、FIFAワールドカップ・グループリーグのスイスVSセルビアが行われていた。本土から離れたこの地は、かつてないほど多くの外国人が押し寄せ、沸き立っている。
女性「カリーニングラードにこんなビッグイベントがやってきてうれしいわ」
こうした中、ワールドカップを見に来た人々が試合会場とは別に訪れるもう1つの場所がある。それは旧ソ連製の潜水艦だ。
■軍事都市としての顔
潜水艦の技術担当者「魚雷の長さは8メートル、重さは2トンあります。発射するには発射管を水で満たす必要があります」
見学者の女性「潜水艦を見るのは初めてなのでワクワクするわ」
バルト海に面したこのカリーニングラードは、潜水艦が象徴するように、知る人ぞ知る「軍事都市」。1990年代はじめまでは外国人の立ち入りは禁止され、現在でも住民の多くがロシア軍の関係者だ。取材団は、その最前線とも言える現場に向かった。
記者「カリーニングラード郊外の演習場に来ました。ここでロシア軍などが定期的に射撃訓練を行っているといいます」
去年9月、カリーニングラードやその周辺地域で行われた大規模な軍事演習の映像がある。プーチン大統領が自ら視察する力の入れようだった。ロシアにとって、飛び地のカリーニングラードはヨーロッパの国々に“にらみ”をきかせるための、重要な軍事的拠点の役割を果たしている。
■国境にはりつめる緊張感
次に取材団が向かったのは、ロシアと外交的・軍事的に対立しているリトアニアとの国境地帯。兵士らが厳戒態勢を敷き、緊張感が漂っている。当時のソ連などに併合された苦い記憶を持つリトアニアは、今もロシアに対し、強い危機感を持っている。
リトアニア・グリバウスカイテ大統領「国境の向こう側にあるカリーニングラードで軍備の増強が続いている」
カリーニングラードを名指しして、警戒感をむき出しにしている。さらに、若者たちが自発的に軍事訓練に参加するなど、ロシアを「現実の脅威」として受け止めている。
プーチン大統領「ロシアにとって、ワールドカップは重要なイベントである」「みなさんとお会いできたことをうれしく思う。ロシアへようこそ!」
世界中の人々が交流を深める華やかなスポーツの祭典の陰で、カリーニングラードでの緊張は続いている。