なぜ?離島に“イノシシ”各地で被害が…
元々、生息していなかった全国各地の離島で、イノシシの目撃情報が相次いでいる。農作物などを食い荒らす被害が出ているが、なぜ、イノシシが離島に姿をみせているのか、そのワケとは?
【兵庫県の離島「沼島」 ある異変が…】
兵庫県にある、淡路島から船で10分のところに浮かぶ離島『沼島』。一周およそ10キロ、人口463人の小さな島で、ある異変が起きていた。
島の至る所にできた大きく掘り返された跡。イノシシが、好物であるミミズや木の根を取るために掘ったとみられる跡が次々と見つかっている。
沼島の住民「200個ジャガイモを植えていたが、200個全部取っていった。(農作物を)植えても、取られるので畑は空いています」
島中の畑で自給自足のために育てられたカボチャやジャガイモなど農作物が荒らされる被害が出ている。
沼島の住民「なんで、こんなイノシシ。僕ら子どもの時から何もいない島だったのでショック」
沼島では、元々、イノシシは生息していなかったが、3年ほど前、突如イノシシの仕業だとみられる被害が出はじめたという。
ことし2月、ついに、その姿をカメラがとらえた。
親子なのだろうか?大きいイノシシの横にもう一頭小さなイノシシの姿が確認できる。
島では、出没した場所を立ち入り禁止にし、仕掛けの檻を設けるなど、対策を行っているが、住民らは戸惑いを隠せずにいる。
沼島の住民「もう4~5年もしたら、人間の数よりも(イノシシが)多くなる」
【なぜ、離島にイノシシが…】
イノシシはどうやってこの島にやってきたのだろうか。
沼島の対岸にある淡路島の灘地区。ここでイノシシの駆除を行う猟師からある有力な情報が。
猟師・中本茂一さん「イノシシが追われて谷をくだってきて、この下を通って、海に出た。それから海に出て、犬は海岸で止まってて、イノシシは海に出て。小さなイノシシ。顔から上だけ出して泳いでいた」
猟犬に追われた末に、イノシシが泳いで逃げる姿を目撃したという。
淡路島から沼島までは、およそ4キロ。この距離を泳いで渡ることはできるのだろうか。
専門家は―。
西日本農業研究センター・堂山宗一郎研究員「(イノシシは)泳ぐのは上手、ずっと海に浮いて沈まないでいられる。少し引き潮に乗って沖まで行くと、そのまま強い潮に流されて、どこかの島に流れ着くことが考えられる」
【長崎県五島市でも…】
すでに、イノシシによる被害が深刻化している地域がある。60以上の離島からなる長崎県五島市。
10年ほど前に海を渡り島に住みついたとみられるイノシシは、その数を急激に増やし、今では、1つの島で1000頭ほどのイノシシが生息しているとみられている。
その結果、イノシシによる農業被害はここ3年で2倍近くにまで拡大。
イノシシに襲われた住民「峠を下る時に右からイノシシが出てきて、バイクと接触して転倒した」
イノシシと衝突したこの女性は、肋骨(ろっこつ)を4本も折り1か月間入院した。
【イノシシ対策に「最先端システム」導入】
イノシシの脅威をなんとか防ごうと、五島市では、地域一体となって対策を進めている。
さらに、NTT西日本などが開発した「最先端のシステム」を全国で初めて導入した。
NTT西日本・東俊喜主査「扉が閉まると、このカメラが作動する。画像が五島市にメールで届く仕組み。前を通るとセンサーが働いて撮影されてメールで届く」
イノシシがワナに捕獲された際に伝えるだけでなく、イノシシがよく出没する市内の10か所にカメラ付きのセンサーを設置。イノシシが現れると自動で撮影し、市の担当者のもとに画像が送信される。
五島市農業振興課・藤原勝栄課長補佐「この画面でわかる紫色の円が捕獲の情報」
捕獲と出没の2つの情報が、1つの地図に反映されるため、効率的にイノシシを駆除することができる。実際に去年11月に導入して以降、5か月間の捕獲数は198頭で、前の年に比べ、5倍以上に増えた。
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この島の取り組みは、イノシシ対策の1つの道筋を示している。深刻な過疎化が進む離島。イノシシへの対策が急がれている。