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記者解説:「はやぶさ2」何がすごいのか?

2018年6月27日 15:37
記者解説:「はやぶさ2」何がすごいのか?

3年半前に打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ2」が27日、目的の小惑星「リュウグウ」に到着した。到着までのプロセスや今後のミッション、注目点を、日本テレビ社会部科学班の小林史記者が解説する。


――日本の小惑星探査機「はやぶさ2」が目的地に到着しました。

相模原にある管制司令室では、JAXAの関係者たちが大勢集まっていて、到着が宣言されたときには、大きな拍手がわき起こっていました。ひとまずは無事に到着して、ホッとしているというところだと思います。


――目的地に到達するだけで3年半、本当に壮大なプロジェクトですね。

リュウグウまで40キロの地点で撮影された最新の画像があります。当初は球形と予想されていましたが、実際に近づいてみると、コマ、あるいはそろばんの玉のような不思議な形をしていたと。クレーターなども見え、地表面がデコボコしている様子がよくわかります。

はやぶさ2は、打ち上げから約3年半かけて到着しましたが、実はここまで来るのも簡単なことではなかったんです。というのも、リュウグウは地球からの距離が約3億キロといわれますが、小惑星の直径はわずか900メートルほどなんです。

つまり、地球から向かうとなると、非常に小さな的をめがけて進んでいかなければいけないと。しかもその的自体が動いていて、しかも、正確な位置もわからないという中で、進まなければいけないものでした。

例えるなら、日本から野球のボールを投げて、地球の裏側のブラジルにいる人のグローブに正確に投入するようなもの。それくらい非常に難しいことだったと。


――しかし、本番はここからなんですよね。

まさに、はやぶさ2のミッションはこれからなんです。今回の最大のミッションは、小惑星の土を掘り起こして、表面ではなく内部の土を採取して、地球に持ち帰ることです。そのために、まず、はやぶさ2が行うのは、カメラで上空から地表面を撮影して立体地図を作ったり、その上で、ローバーと呼ばれる探査車を地表面に降ろして、より詳しいデータを取得します。

こうしたデータを基に、土を採取するのに最も適した場所を絞り込んで、そこに秘密兵器である“弾丸”を打ち込んで、クレーターを作って、土を掘り起こして採取するという計画に進みます。


――初代・はやぶさよりも、かなり高度な技術が求められそうですね。

全く違いますね。初代・はやぶさは、まずは小惑星に到着して、そこから何らかのものを採取して、無事に戻ってくるというのが最大のミッションでした。今回は2号機ですから、それに加え、惑星内部の土や、微粒子よりも大きいかけらを地球に持ち帰るという点で難易度が高いといえると思います。

さらに、これらの作業をより難しくしているのが、全てが「遠隔作業」で行われるという点です。地上の管制室とこの探査機の間の通信には片道20分もかかるといわれています。地上から一度コマンドを送ると、20分かけて到達し、そこから応答が20分かけて返ってくるということで、これらのタイムラグを正確に計算しながら、指令を出さなければならないという、非常に高度な技術が求められます。


――そこまでして、小惑星の内部の土を持ち帰る理由というのは何なのでしょう。

今回、探査が行われる小惑星リュウグウには、水や有機物を含んだ鉱石がたくさんあるとみられています。この水や有機物というのは、私たち生命体をかたちづくる材料となっているものなので、それを詳しく分析することができれば、「地球の水がどこから来たのか」「有機物はどうやってできたのか」など、地球や太陽系の誕生にまつわる謎を解き明かすヒントが見つかるかもしれないと期待されています。


■小林史プロフィル
日本テレビ社会部科学班の記者。ニューヨーク特派員時代は、ハリケーン「カトリーナ」の被災地やBSE、いわゆる狂牛病などを取材。また、震災後の福島第一原発の状況も伝えてきた。現在は、科学関連の取材を担当するとともに、日本テレビの英語ニュースのアンカーも務めている。


【the SOCIAL guestより】