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“食の危機”作り手と消費者をつなげる 4

2018年6月21日 17:01
“食の危機”作り手と消費者をつなげる 4

スマホひとつで旬の食べ物を食卓へ届けるポケットマルシェの代表取締役・高橋博之氏に聞く「飛躍のアルゴリズム」。田舎のお裾分けとSNSについて、そして今の“つるつる”した社会を“ごにょごにょ”にさせたいという高橋氏に話を聞く。


■軸がぶれていないからこそ

――記者という仕事というよりは、自分がやりたいこと、夢、目標というように軸がぶれずにやってきたというところが…

若いころはこういう仕事がいいと形から入っていたんです。でも人生は思い通りにならないと僕は諦めていたんですよ。逆に、今やりたいことは伝えることなので、だったら手段はなんでもいいということで、柔軟に考えるように思い通りにならない人生を自分の中で受け入れたんですよ。すると結果として思い通りになっていったと。

――軸がぶれていないからこそ、夢をかなえることができたということですね。

途中で失敗すると、向いていないんだなと諦めるじゃないですか。しつこく、しつこく諦めないとこうなるという。

――ジャーナリストとして評価をされたいま、やりたいこと、何かしたいことはありますか。

変わらず、こういう生き方を死ぬまで続けていくと思いますが、結局メディアというのは「見えないものを見えるようにすること」「異質なものをつなげること」この2つが役割だと思っています。

まさにいま生産者が見えない。それで生産者と消費者が同じ社会で生きているのに全く異質なものになっていてつながらない。ですので「ポケットマルシェ」を通じて、生産者の姿を可視化して、彼らの魅力を見えるようにして、異質な世界ではないんだよと、つながっているんだよと。異質な両者をつなげるということをしつこく世の中が変わるまで続けていきたいと思っています。


■田舎のお裾分けとSNS

――そういった意味ではSNSの活用というのはこれからも大きなキーワードになっていきますか。

田舎でお裾分けというのがあるのですが、隣近所から作りすぎたといって持ってこられるんですね。するとお裾分けでもらった野菜は捨てられないんです。顔が見えているから、この人たちがどんなに苦労をして作っているのかというのを日々目にしているので捨てられない。また、あげる側もいい加減なものを出せないんですよね。

それでいまSNSがあるので地域でやっていたお裾分けが、日本中で顔が見える形でできるようになったというのがSNSの面白いところですね。


■“つるつる”では関心が持てない

――できたネットワーク、個人個人のつながりというのは、何か起こったときに力にもなりますよね。

結局、“つるつる”だと関心が持てないので、震災が起きたときも顔が見える人たちというのは強かったんですよ。顔が見える生産者のお客さんというのは、みんな飛んで行って寄付も集めて他人事じゃなくなるんです。あの人がやられたというと一目散に助けに行くわけです。

今の社会は“つるつる”しているから、もっと“ごにょごにょ”させて、かかわりを生んでいくというのは、いざ何かあったときの力になるというのは7年前に教訓として学んだはずですから。

それは日常からやっていかないと。これから先、南海トラフだってくるかもしれないわけで、身にしていかないと7年前はなんだったんだという話になります。


■人生の締め切りを意識して

――視聴者の方というのは色々なところで働かれていたり、色々な思いをもって生活されている方がいると思うのですが、何かメッセージはありますか。

仕事も宿題も締め切りがあるからやるんですよね。納期があるから頑張るんですよ。締め切りがなかったらやりますか。やらないでしょ。

人生もいっしょで、人生にも締め切りがあるんです。日常生活の中で締め切りというのは「死」ですけど、死を考える機会というのは僕らないので、やらなければいけない、やりたいけどいつかやろうといって、先送りしているのですがそのうち締め切りがくるわけです。

余命宣告されたとき、そのときに価値観、優先順位、時間の使い方、生き方が変わるんですが、残された時間は少ないんです。人生には締め切りがあるということに早く気づいていれば、後悔のない生き方をするはずです。それも7年前の被災地で僕が教わったことですね。

だから「やりたいことは今やる、明日はない」という生き方をしていたら、そのときが来ても後悔はないような生き方になるはずです。偉そうなことをいってすいません。