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両陛下“最後の被災地訪問”皇室記者に聞く

2018年6月13日 15:57
両陛下“最後の被災地訪問”皇室記者に聞く

天皇・皇后両陛下は今月9日から11日にかけ、福島県を訪問し、原発事故から避難してきた人たちと懇談などをされた。東日本大震災の被災地訪問は退位前、最後とみられる。日本テレビ報道局の皇室担当・森浩一記者に聞く。


――今回、両陛下は原発事故後、初めて「帰還困難区域」に向かって、車の中から原発の方向をじっと、ご覧になっていたそうですね。

前侍従長に伺ったところ、天皇陛下は、震災直後から原発に対して、本当に心を痛められていて、「ヘリコプターからでも上から見えないだろうか」とずっと望まれてきたといいます。そういう意味では、ようやく7年後に、原発の近くまで行くということがかなったわけなんです。

なぜ天皇陛下はそこまで原発事故に心を痛められているか、ということをお聞きすると、他の災害でもあることですが、原発事故は自分たちの町に帰れなくなるということに本当に心を痛められていて、さらに7年たった今でも風評被害が続いている。特に農業、水産業というのは原発事故で大変な打撃を受けました。

両陛下は前回、福島に行かれた時も桃農家を訪問されて、そこで桃をお食べになって「本当においしいですね」ということをおっしゃったり、今回も相馬市で魚市場を訪問されて、ここで風評被害の様子とか、どういう風に回復してきているのか、ということをお尋ねになりながら、さらに相馬産のカレイとホッキ貝もお買い求めになったということです。やはり、そうやって自らが風評被害を払拭するために何かできないだろうかと、そういった思いで訪問されている、こういったこともすごく大切なことなんだと思います。


――両陛下のご訪問、それからお言葉に、復興の励みになると涙されている方も印象的でした。

そうですね。今回、福島の方々が、本当に大勢でお見送りになられて、やはりそういった両陛下の思いというのを地元の方はわかっているんですね。

今日のオピニオンということで「忘れない」と書いたのですが、やはり両陛下の思いというのは、忘れないということだと思うんです。震災から7年たっても、まだ苦しんでいる方がいるんだよということを、何度も何度も被災地を訪問することで、両陛下は私たちにメッセージを伝えてくださってると思うんですね。


――今後こうした被災地だったり、慰霊の訪問などは、皇太子さまにも引き継がれていくものなのでしょうか。

そうですね、これまでは、皇太子ご夫妻も被災地訪問などは、まずは両陛下のお務めだということを認識されていて、いちばん先頭に立つということではなかったと思うのですが、やはり両陛下のやってこられたことを受け継ぎたいという覚悟を何度も示されていますので、被災地訪問、戦争の慰霊ということもされると思います。

やはり皇太子ご夫妻は、戦争を実際に経験された方ではないので、両陛下と受け止め方はお違いになるとは思うんですが、例えば沖縄のことに関しても、両陛下から受け継いで、ずっと沖縄の豆記者(沖縄から上京し、取材活動を行う小・中学生たち)を毎年夏に迎え入れて、東宮御所でお話しになったりしています。やっぱり沖縄というのは、戦争と切り離せない場所ですし、おそらくそういったところにも積極的に向き合っていかれるのではないかと思います。


■森浩一(47)プロフィル
日本テレビ報道局の皇室担当記者。足かけ20年にわたって皇室取材に関わり、天皇・皇后両陛下のお姿を間近に見続けてきた。来年の天皇陛下退位に向け、大きく動く皇室の取材を続けている。


【the SOCIAL opinionsより】