×

米朝会談どう見る 非核化は?終戦宣言は?

2018年6月12日 13:58
米朝会談どう見る 非核化は?終戦宣言は?

シンガポールで開催した史上初の米朝首脳会談。この会談の焦点を、朝鮮半島情勢に詳しい早稲田大学大学院の李鍾元教授と、アメリカの安全保障に詳しい明海大学の小谷哲男准教授が解説する。


■会談の最大の焦点は「北朝鮮の非核化」だが、注目する点は。

【李教授】
まずは非核化が何を意味するのか。定義や範囲の問題ですが、核の施設から物質、兵器まで、おそらく大枠の合意は今回出るだろうと思います。

そこで非核化の範囲はどこまでにするのか。さらに、今回の一番の注目点は、いつまでという期間を設定するのか。そのへんが完全に詰められてないようです。

そういう意味では、大枠の総論的な合意というものにとどまる可能性が高いというのが、いまの感触です。

【小谷准教授】
アメリカ側は「朝鮮半島の非核化」という言葉を使っていますが、目指しているところは北朝鮮の非核化であって、これに関してトランプ政権は譲る気がないという姿勢を示しています。

他方で、今回なにかしらの大枠の合意ができても、これまで何度もだまされてきています。それについても非常に慎重な姿勢を維持しているので、それが今日予定しているトランプ大統領の記者会見の中で、どのような言葉で出てくるのかが注目だと思います。


■アメリカ側は、「完全で検証可能かつ不可逆的な非核化」を求めているが、今後はどういった姿勢で臨んでいくのか。

【小谷准教授】
アメリカ側が最初に望んでいるのは、すでに存在している北朝鮮の核弾頭、これをなんとしても北朝鮮の国外に持ち出したいということ。

当然、北朝鮮はすぐにそれを受け入れないでしょうから、米朝間でこの問題に関してどれくらいの譲歩ができるのかがポイントになってくると思います。


■一方、北朝鮮側は非核化の段階ごとに見返りを求める立場。アメリカとの溝は埋まるのか。

【李教授】
アメリカも最初は一括妥結と言いましたが、だんだんハードルを下げて、トランプ大統領自身も「時間がかかる」という表現をしている。今回が始まりで、これからも続けるということなので、おのずと段階的になると思います。

ただ、そこで問題は、段階の時期がどのくらいなのか。あるいは、その段階ごとにどのくらいのインパクトがあるのかということ。

従来の北朝鮮は、段階的に核施設の凍結など、低いレベルから譲歩をして小さい援助を得るというパターンでした。まだフタを開けてみなければわかりませんが、以前は最終目標であった核兵器やICBM(大陸間弾道ミサイル)――アメリカが一番関心を持つものに、部分的であっても何かの決定、結論を下して、その見返りに体制や経済の保証など、もっと大きなものを得ようという交渉をずっとやってきたようです。

今回、まとまらないかもしれませんが、おそらくもう一回、首脳会談をすぐ設定するという話です。以前、後回しにしていた核兵器とICBM、これを初期段階の入り口から取り組んでいくという話がまとまるかどうかだと思います。


■もう1つの焦点は、「朝鮮戦争の終結」。トランプ大統領は前向きな姿勢を見せていたが、前進する可能性はあるのか。

【小谷准教授】
朝鮮戦争の終結、さらにその先の平和協定、そして米朝の国交正常化については、おおまかな方向性については合意できる可能性は十分にあると思います。

非核化でおそらく前進があまりできないので、そのぶん朝鮮戦争の終結や平和協定の面での前進を見せるということも、トランプ政権としては考えていると思います。

これはトランプ政権にとっての成果にもなりますし、北朝鮮からの譲歩を引き出すための取引材料という、両面があると思います。


■北朝鮮側にとって、朝鮮戦争の終結はどういう意味を持つのか。

【李教授】
アメリカとの敵対関係を解消していくということです。北朝鮮がずっと求めていたものではあるんですね。終戦宣言というのは韓国政府のアイデアですが、平和協定をずっと求めていたんです。

国際法の条約でもなく、政治的な宣言で裏付けする措置をとるということですので、終戦宣言というのは平和協定よりはやりやすいわけです。そういう意味では、北朝鮮にとっても“獲得”ですが、アメリカにとっても見返りの一部です。

ですので、非核化に進展がなければ終戦宣言がすぐ出るというのはおそらく考えにくい。何かの交換条件として終戦宣言があるかもしれません。今回まとまらなければ、来月が休戦記念日ですので、何らかの宣言があるかもしれません。