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米に翻弄されるキューバ 異変に進出企業は

2018年6月1日 15:42
米に翻弄されるキューバ 異変に進出企業は

3年前、アメリカとの国交が回復して以来、キューバは観光業などを中心に外資の獲得に力をいれている。しかし去年、トランプ政権が誕生してキューバへの方針を転換したことを受け、異変が起きている。


■デヴィ夫人も“お忍び”で

観光地として人気が高まるキューバ。5月、デヴィ夫人が“お忍び”で訪れていた。旅行で訪れるのは今回が2回目だという。キューバ旅行のリピーターであるデヴィ夫人に、魅力を聞いてみると――

「エキゾチックなこと、スペインの歴史があること、何でもお安いことじゃない」

3年前、アメリカのオバマ政権との間で実現した国交正常化。これを機に、観光客は一気に増加した。さらに、経済制裁も緩和され、ビジネスチャンスを狙って企業のキューバ進出も加速した。


■ビジネスチャンスに政府もバックアップ

その流れに「遅れまい」と動いた日本企業がある。産業用の冷凍機を販売している“前川製作所”は、3年前、キューバ市場に乗り出した。インフラ整備が遅れているキューバには、大きなビジネスチャンスがあるとみたのだ。前川製作所の小倉さんはこう語る。

「市場開放されることによって、アメリカ企業が参入してくる。日本企業は同じスタートをきっていると市場参入に勝てないので、早めのうちにキューバ市場に参入しようと」

進出を目指す企業をサポートしようと、日本政府も動いた。安倍首相は「キューバの旺盛な成長需要に対し、医療分野をはじめ日本の質の高いインフラを提供する。官民一体で投資拡大していく」と述べた。

投資の拡大に向けて両国の政府が協力を確認するなど、環境整備も進んだ。キューバ側も投資を呼び込むチャンスと捉えたのだ。


■「キューバ熱は正直、冷めた」

首都ハバナから車で約40分の場所にあるマリエル経済特区。キューバ政府はこの場所で外貨獲得を狙い、企業誘致を進めるプロジェクトを始めた。しかし今、この動きに“異変”が起きている。

実際に現場を訪れると、手つかずの土地も残ったまま。関係者からは「予定より工事が遅れている」との声が出ている。その要因の1つは、去年誕生したトランプ政権だ。

オバマ政権の方針を転換し、アメリカ人の渡航制限を強化したり、貿易・金融取引などの規制を強めたりしたのだ。小倉さんによると「(トランプ政権で)オバマ政権とかわって、逆方向に行ってしまっているのが現状」という。

ここ数年続いた日系企業の進出も、2018年は新規の予定は無いという。「(キューバ熱は)正直、冷めたと思います。トランプ政権のうちは難しい」と小倉さんは話す。

アメリカの方針転換に揺れるキューバ。ビジネスチャンスを狙い進出した企業にも、新たな戦略が求められている。