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ワーク・スマートで「人生のCEOに」 3

2018年5月1日 18:19
ワーク・スマートで「人生のCEOに」 3

グーグル専務執行役員CMO・岩村水樹氏に聞く「飛躍のアルゴリズム」。3つ目のキーワードは「テクノロジーで“働き方改革”を加速する」。グーグルが提供しているサービス“Googleカレンダー”を利用した効率的なワークスケジューリングとは。


■テクノロジーで女性を支援


――グーグルは世界の課題を、テクノロジーを活用して解決することを目指しているそうなんですが、どのように働き方を改善するのか、とても興味深いですよね。

“Women@Google”の活動を経て、フレキシブルに働ける環境を作らなきゃいけないと思ったんです。グーグルの中だけではなくて、きっと別の企業の方々にとっても役に立つということで立ち上げたのが、“Womenwill”プロジェクトになります。

“Womenwill”自体は、テクノロジーで女性を支援するという発想で、アジア全域でいろんな国の状況に応じてやっています。日本では働き方を変えていくことによって、女性が働き続けられることが非常に重要なテーマではないかと思って立ち上げました。


――30を超す日本の企業と取り組まれた在宅勤務の実験結果を踏まえて、日本がよく言う“報連相(ほうれんそう)”はいらないということもおっしゃっているんですが、それはどういうことですか。

実証研究がいくつかあるんですけれども、1つは、ビデオ会議を使って在宅勤務をやりましょうというものですね。あとは、オンラインのカレンダーを使うこと、共有文書ツールを使って会議を効率化することを行いました。今回、一番のテクノロジーとして私が活用しているものをご紹介したいと思います。


■自分の時間をスケジューリング


――それが、“Googleカレンダー”ということですよね。どのように使われるんですか。

(モニターを見て)この“Googleカレンダー”には、私の来週の予定が表示されています。実はこの中に、仕事以外の予定も入っているんですね。

“DNS”と書いてあるものは「Do not schedule」、この時間はプライベートで予定が入っているので、この時間帯にはミーティングなど設定しないでねという意思表示ができます。それ以外にも、他の人のカレンダーも表示することができます。


――色が違うのは人が違うということですか。

そうです。チームメンバーのうち、2人のメンバーのカレンダー上のスケジュールを表示していますが、23~25日までずっと入っている青色のところには、「DNS:Drop off kids」と入っています。このメンバーは大変なイクメンで、朝、保育園に自分で(子どもを)ちゃんと送っていらっしゃる方です。この時間帯はミーティングを入れてもらっては困るということです。


――非常に効率的に仕事ができるし、可視化されているとわかりやすいですね。

仕事を可視化することは非常に価値があることです。私もこの中にミーティング以外の予定も入れています。自分の今週、今月やらなきゃいけないことをあらかじめプランニングして、この中に入れておくんです。

それ以外に、ここに“WFH”と書いてあります。「Work from home」、在宅で勤務していますということです。この部分で良いことは、在宅勤務ですよという宣言もこの中で決定できること。いちいち報告をしなくても、フレキシブルに決めることができます。ここにいますよということをカレンダー上で宣言ができるんです。ある種、自分でコントロールをすればいいと。

“WFH”に並行して定例ミーティングとかありますが、この定例ミーティングには、家からビデオ会議で入れるわけです。ビデオ会議とカレンダーを組み合わせることによって、家にいても会社と遜色なく仕事ができる。

さらに、わざわざマネージャーがいちいち報告をしなくても、何をやっているか知ることができます。定例ミーティングの後にある「OKR Tracking」と書いてあるのがそうです。

ただ原則は、成果さえ出してくれればいいので、あとの時間は自分でコントロールをして使ってほしい。そのために、このカレンダーを使いましょう、あるいはチームで仕事をしやすくするために使いましょうという考えです。

実際にこの実証実験をやった企業では、平均で8~9時間だった在社時間が1時間減って、7~8時間になった。要は、このカレンダーを活用して、今日の終わりの時間はいつですと自分で決めるんですね。

まさに今やありがちな「一斉に残業廃止でこの時間に帰りましょう」ということよりも、自分のライフスタイルや仕事の状況に合わせて、自らの時間をコントロールしてスケジューリングしていくことによって、むしろ効率が上がるということです。


――自分でもだらだら残業するような感じではなくなるわけですね。

その通りです。カレンダーに管理される。「Calendar is my boss」という感じですね。


――個々の力も上がりそうですし、チームの力も上がりそうですよね。

最終的に、成果を出すためには自分がいかに効率よく仕事をしていくかが意識づけられると思います。


■仕事とプライベートが混在…対策は?


――プライベートの時間と仕事の時間が混ざってしまうことは、あまりないですか?

それは比較的ありますね(笑)。カレンダー上に、結構プライベートな時間や予定も堂々と書いてしまいます。例えば、次の日に運動会がありますというときには、私も張り切ってお弁当を作りたいということで、今日は16時くらいに帰ってお買い物に行きますということを書いちゃうんですね。

そうすると、この場は自分が自分で時間をコントロールすることができるんだということが伝わるんですね。それによって、まさにチームの中にも安心感が生まれて、“チームを家族に”ということにもつながっていく。お互いどういう状況かわかることによって、サポートができる。


――確かに昔、子どもの運動会や保護者会は、相当コソコソした気持ちで出席していましたが、その必要がなくなるわけですね。ルールや決まり事はあるんですか。

テクノロジーに関して言うと、やっぱりプライベートと仕事が混ざってしまうという悪い側面もあります。メールはいくらでもできますし、チャットツールは在宅でいるときなんかは、とても便利なんですね。即時にチャットツールを使って誰かの反応を得ることができる。ただこれをやっていると、いつまでたっても仕事から離れられないということになってしまいます。

なので、チーム内では一応ルールを決めています。例えば、22時以降はメールを出さない、週末はメールを出さない、どうしても緊急な場合は電話をかけようというルールを決めることで、その時間帯は仕事から離れられる。

もちろん仕事の事を考えるのはいいんですけれども、誰かから何かきてリアクションをしなきゃいけないという常時臨戦態勢でいることは、精神衛生上も良くないので。